世界若者ウチナーンチュ連合会のメンバー=10月27日、浦添市内

 世界各地の県系移民や沖縄の若者同士のネットワーク構築などを行う、世界若者ウチナーンチュ連合会(WYUA、ユア)が、2025年に一般社団法人として10年を迎えた。2011年の「第5回世界のウチナーンチュ大会」をきっかけに任意団体として発足し、現在では県や市町村の委託事業や独自事業などで、若者に限らず世界のウチナーンチュ(沖縄人)と沖縄をつなげる活動を草の根レベルで日々続けている。
中でも、海外県系人のルーツ探しを手伝う事業では、限られた資料や情報から沖縄の親戚との出会いにこぎ着けるなど、文字通り沖縄と世界の架け橋となっている。
一口メモ:沖縄の海外移民
集団移民としては1899年にハワイへ26人が出発したのが初めて。現在ではハワイの他、南米ではブラジル、ペルー、ボリビア、アルゼンチンを中心として、世界各地に約42万人(推計)のウチナーンチュがいるとされている。概ね5年に一度開催される「世界のウチナーンチュ大会」では、世界各地から県系移住者やその子孫、沖縄にゆかりのある人々が集結し、賑やかなパレードやセレモニーなどでルーツを確認し合う。
県系人デザイナーとコラボ商品でチャリティにも
 WYUAは「次世代へのウチナ―ネットワーク及びアイデンティティ継承」を掲げ、18歳から35歳を対象とした「世界若者ウチナーンチュ大会」を実施。2012年ブラジル、2013年米国、2014年ドイツ、2015年フィリピン、2016年沖縄、2018年ペルー、2022年沖縄と、世界各地で実施してきた。

世界若者ウチナーンチュ大会の様子=2012年、ブラジル(WYUA提供)

 このようにして作り上げた若者同士のネットワークは、国境を越えた県系人の協働に力を発揮している。実際に、2013年に沖縄ファミリーマートのテレビCM「結 世界編」ではコーディネートを担当。世界各都市で場面が変わりながら、県系人たちがBEGINの「国道508号線」に乗せて次々と踊る様子は、世界のウチナーンチュの一体感をアピールした。
 その他にも、海外からの研修生受け入れや国際交流事業のコーディネート、各国をビデオ通話でつないだ国際会議の運営、各国の関係機関との連携強化など、幅広く活動を行っている。
 新しく行っている取り組みの一つに、海外在住の県系人のデザイナーと連携したオリジナルグッズの制作・販売がある。ことしが戦後80年である節目に合わせて、売上の大半をひめゆり平和祈念資料館へ寄付するというものだ。
物販や社会貢献という面でも沖縄ルーツを誇りに一体となって動いている。

県系移民の多いブラジル・カンポグランデで作られているスタイルの沖縄そばを作るイベントの様子=2024年、琉球大学(WYUA提供)

年間200件の相談業務に対応
 そんなWYUAの現在の活動の大きな軸となるのが、2021年度から県事業を受託して行う「ウチナ―ネットワークコンシェルジュ」だ。国際交流や沖縄文化継承に向けた“総合窓口”として機能を果たしている。事務所は浦添市前田のJICA沖縄センター内に構えており、多岐にわたる業務を、海外留学経験をもつスタッフが少人数で運営している。
 窓口は日本語、英語、スペイン語、ポルトガル語で多言語に対応している。県内からは「今度アメリカに行くんですが近くに県人会ありますか?」、海外からは「沖縄に留学したいんですが受け入れのプログラムはありますか?」といったように、「本当にさまざまな内容のお問い合わせや依頼があります」(比嘉千穂代表理事)という。その数は年間約200件にも上り、その一つ一つに真摯に対応してきた。
 その他にも、国内外の沖縄関連イベントの情報発信や、世界のウチナーンチュの歴史や今を学ぶワークショップや研修の企画開催、世界各地をつなぐ交流イベントの運営、沖縄移民関連資料の情報収集などを行っている。
ルーツ探しも全面サポート

WYUAの比嘉代表理事=10月27日、浦添市内

 WYUAの独自事業としての柱の一つが、ルーツにまつわる相談サービスだ。主に海外在住県系人を対象に、「沖縄の親戚を探したい」「先祖のお墓を見つけたい」などの相談を受けている。同じく移民関係の資料や調査ノウハウを持つ県立図書館とも連携・協力しながら、行政の手が届きにくいところまで細かく対応する。2023年から開始し、これまでに40件の相談に応えている。

 これを通して親戚と出会えた一人が、ブラジル出身3世で南城市にルーツのある女性だ。亡くなった祖母から聞いたわずかな情報と古い写真、名字だけを手掛かりに親戚と会うことができ、お盆や正月といった家族の行事参加やお墓参りが叶った。「沖縄で親戚と出会えたことがほとんど夢のようでした。親戚のみなさんは温かく迎えてくれました」とコメントを寄せる。その後、父と妹を沖縄の親戚に紹介することができたという。時間と距離を超えた架け橋の連鎖が生まれた。
 「沖縄からも海外からも両方から喜ばれるので、携われて本当にありがたいです」と話す比嘉代表理事。「移民の歴史や今を知ることで、見える景色が変わりますし想像力も広がります。世界中のウチナーンチュと一緒に『あんなことが出来そうだ』『何かやりたい』と思えることが、みんなで豊かになるスパイスになると信じています」と、県内でのさらなる情報発信などに意欲を見せ、県外・海外に住む人々に対しては「それぞれの人生に合わせた形で沖縄と関われる機会を広げていきたいです」と、“沖縄への思い”を世界に広げる。
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「夢のよう」古い写真から親戚と対面 年200件の相談に奔走 沖縄と県系人を結ぶ若き“架け橋”WYUA
世界若者ウチナーンチュ大会の様子=2012年、ブラジル(WYUA提供)">
「夢のよう」古い写真から親戚と対面 年200件の相談に奔走 沖縄と県系人を結ぶ若き“架け橋”WYUA
県系移民の多いブラジル・カンポグランデで作られているスタイルの沖縄そばを作るイベントの様子=2024年、琉球大学(WYUA提供)">
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