画面に映し出されるのは、風に乗って漂う潮の香りと魚のにおい。それらをまといながら舘ひろし演じる元ヤクザの男はそこにいる。

 目の見えない孤独な少年と、世を忍んで漁師をしている元ヤクザの男。交わるはずのなかった2人の魂が近づくのに理由は要らなかった。居場所のない二つの魂は温め合うように寄り添い、誰にとがめられようと、止められようと離れることはなかった。
 「おじさん」と呼ばれ慕われる男の行く末に暗雲が立ち込めるのを、見ている私たちも予感してしまう。彼の中にあるのは少年のために何ができるのか、その一点に絞られていく。
 他者のために生きる事に自らの人生をかけた男の壮絶な叫びは、海鳴りとともに襲い掛かり「おまえは何のために生きるのだ」と、問いかけて来る。
(スターシアターズ・榮慶子)
◇シネマQ・ミハマで上映中
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