「スズキタゴサク」。偽名と分かるその不自然さが、不気味さを増幅させる。
東京中に仕掛けられた爆弾の爆発を予言する男を演じる佐藤二朗。笑顔でも笑っていない。感情のない語り口で、対(たい)峙(じ)する刑事の心に入り込む。「怪演」と呼ぶにふさわしい。
 取調室で刑事たちを翻(ほん)弄(ろう)する姿は、「ダークナイト」のジョーカーや「セブン」のジョン・ドゥをほうふつさせる。口を開くだけで場の空気がねじ曲がり、見ている側まで精神のゆらぎを覚える。
 「人を殺したいと思ったことはありますか?」。怒りや憎しみという「心の爆弾」は誰の中にも潜んでいる。ネットやSNSには、匿名で他者の導火線に火をつけかねない言葉が飛び交う。誰の心にも潜んでいる「スズキタゴサク」を、社会全体が刺激しやすくなっている時代だ。そんな現代の不安を鋭く映し出す極上の心理サスペンスだった。(DX推進部・屋良朝輝)
◇シネマQ・ライカム・ミハマで上映
【スターシアターズ・屋良朝輝の映画コレ見た?】『爆弾』社会不...の画像はこちら >>
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