東京電力福島第1原発事故から14年8カ月。事故後いったんゼロになった原発の再稼働が加速している。

 新潟県の花角英世知事が、東電柏崎刈羽原発の再稼働を容認すると表明した。事故を起こした東電の原発再稼働は初めてとなる。
 東電は2013年に同原発6、7号機の審査を原子力規制委員会に申請。17年に合格し、地元同意が残っていた。
 なぜ今なのか。花角知事は近年のエネルギー情勢や、国の再稼働要請から1年半が経過したことなどを挙げる。早ければ来年1月にも6号機の原子炉起動が可能になるという。
 しかし、県が先月公表した県民意識調査では約6割が「再稼働の条件が整っていない」と回答した。県民の不安は根強く、合意形成されたとは言い難い。
 事故後、原発は軒並み停止された。それが新しい基準の下、15年の九州電力川内原発(鹿児島県)を皮切りにこれまで14基が再稼働している。
 ただ、不祥事が続く東電の企業体質には疑念が拭えない。

 柏崎刈羽原発ではテロ対策上の重大事案が相次ぎ、規制委が事実上の運転禁止命令を出す事態に陥った。その後解除されたものの、別の問題が起きていたことも先月露見した。
 東電は福島第1原発の廃炉作業も抱える。作業は難航しており目標とする51年までの廃炉完了は見通せない。事故の訴訟も終結しておらず、そうした中で原発を運転する重責が担えるのか。
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 北海道の鈴木直道知事も先月、北海道電力泊原発3号機の再稼働を容認する考えを示した。
 再稼働には北電と安全協定を結ぶ周辺4町村の首長や知事の意向が焦点となっていた。27年早期の再稼働を目指すという。
 背景には事故後に原発依存を減らす方針を掲げてきた政府が、原発の「最大限活用」にかじを切ったことがある。
 今年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画では40年度の電源構成に占める原発比率を2割程度に設定した。
 それには既存原発の大半に当たる約30基を動かす必要があり、再稼働に向け地元の同意取り付けを押し進める。
 こうした政策の下で関西電力は美浜原発(福井県)での原発新設に向けた調査を再開した。
福島の事故後、新設に向けた調査は初めてだ。
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 しかし、地震大国の日本で原発依存は危険だ。
 福島ではいまだに帰還困難区域が広い範囲で残る。原発から出る「核のごみ」の最終処分場も建設のめどは立っていない。
 再生エネルギーに比べ安価とされてきた原発だが、建設費や最終処分などを含めると相対的に高くつくことも明らかになっている。
 何より原発に対する地元の住民の不信はいまだに解消されていない。
 なし崩し的に再稼働を進めるべきではない。
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