沖縄美ら海水族館で飼育されているミナミバンドウイルカ「オキちゃん」(推定52歳)が2日、同館のオキちゃん劇場で死んでいるのが確認されました。1975年の沖縄国際海洋博覧会から50年間、愛らしい姿で、県内外の来場者の心を癒やしてくれたオキちゃん。
沖縄タイムスの過去記事や写真で、その歩みを振り返ります。(デジタル編集部・篠原知恵、吉元晋作)
 1975年の沖縄国際海洋博覧会をきっかけに、沖縄にやってきたイルカは全部で15頭。当時の新聞によると、来県当時はみんな「オキちゃん」と呼ばれていたようです。
 イルカたちは、海洋博を目前に控えた1974年、奄美・瀬戸内町近海などで捕獲されました。当時の本紙は、その輸送の様子を報じています。ヘリコプターで1フライトに1頭ずつ、細心の注意を払って、奄美から沖縄へ空輸されたそうです。
写真を拡大 1975年4月25日付の沖縄タイムス紙面
沖縄国際海洋博覧会の会場に到着し、地元の子どもたちから歓迎されるイルカのオキちゃん=1975年4月25日、本部町
沖縄国際海洋博覧会に到着し、子どもたちになでられるオキちゃん=1975年4月25日、本部町

 しかし、慣れない空の旅や沖縄での環境変化が影響したのか、来県から1カ月も経たないうちに、15頭のうち3頭が肺炎で死んでしまいました。 当時の本紙は、この悲劇を「オキチャン3頭死ぬ」という見出しで報じています。
写真を拡大 1975年6月10日付の沖縄タイムス紙面

 沖縄に渡った15頭の中で生き残り、50年余り活躍したオキちゃん。これまで計13回妊娠し、1999年に出産した「サミ」の繁殖に成功しました。ミナミバンドウイルカは飼育例が少ないため繁殖について知見は乏しく、国内で初めての繁殖記録となったといいます。

ぴったりと寄り添いながら泳ぐオキちゃん(右)と娘のサミちゃん=1999年5月3日、本部町・海洋博公園

 その陰には、苦難の歴史もありました。
過去に死産や子の死が続いた際、亡骸を離そうとしないオキちゃんから係員がやむなく取り上げたことで、彼女は人間を「子を奪う存在」と認識し、人間不信に陥った時期もあったそうです。飼育員たちは、そんな彼女の心の傷を癒やし、粘り強く信頼の回復に努めました。

華麗なジャンプを見せるオキちゃん=1月21日

 以来、半世紀にわたり海洋博公園の「顔」として親しまれ、沖縄観光を牽引し続けたオキちゃん。 今年5月には盟友「ムク」と共に飼育開始50年という大きな節目に到達し、その生涯を通じてミナミバンドウイルカの世界最長飼育記録を更新し続けました。 

今年7月、オキちゃんとムクに沖縄タイムス賞感謝状が贈られたことを記念し、オキちゃん劇場の来場者に配られた「特別号外」

 幾多の悲しみを乗り越え、最後まで私たちに笑顔と感動を与え続けてくれたオキちゃん。その愛らしい姿と優しい瞳を、私たちは決して忘れません。 ありがとう、オキちゃん。安らかに。

オキちゃん=6月20日
【追悼】ありがとうオキちゃん “15頭から始まった物語” レ...の画像はこちら >>
沖縄国際海洋博覧会の会場に到着し、地元の子どもたちから歓迎されるイルカのオキちゃん=1975年4月25日、本部町">
【追悼】ありがとうオキちゃん “15頭から始まった物語” レジェンドの半世紀を振り返る
沖縄国際海洋博覧会に到着し、子どもたちになでられるオキちゃん=1975年4月25日、本部町">
【追悼】ありがとうオキちゃん “15頭から始まった物語” レジェンドの半世紀を振り返る
ぴったりと寄り添いながら泳ぐオキちゃん(右)と娘のサミちゃん=1999年5月3日、本部町・海洋博公園">
【追悼】ありがとうオキちゃん “15頭から始まった物語” レジェンドの半世紀を振り返る
華麗なジャンプを見せるオキちゃん=1月21日">
【追悼】ありがとうオキちゃん “15頭から始まった物語” レジェンドの半世紀を振り返る
今年7月、オキちゃんとムクに沖縄タイムス賞感謝状が贈られたことを記念し、オキちゃん劇場の来場者に配られた「特別号外」">
【追悼】ありがとうオキちゃん “15頭から始まった物語” レジェンドの半世紀を振り返る
オキちゃん=6月20日">
編集部おすすめ
沖縄タイムスプラスの記事をもっと見る

トピックス

今日の主要ニュース 国内の主要ニュース 海外の主要ニュース 芸能の主要ニュース スポーツの主要ニュース トレンドの主要ニュース おもしろの主要ニュース コラムの主要ニュース 特集・インタビューの主要ニュース