トランプ米政権が公表した「国家安全保障戦略(NSS)」は、バイデン前政権からの全面的な路線転換を改めて浮き彫りにした。
権威主義的なロシア、中国、北朝鮮に対し、価値観を共有する米国と同盟国が共同で対処するという従来の構図は見られない。
目立つのはロシアや中国に対する融和的な姿勢だ。
中国を巡っては、台湾を地政学的要衝と指摘し、紛争を抑止することが「重要事項」だと明記した。
さらにNSSは、南西諸島、台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」について、同盟国が防衛への取り組みをさらに強化すべきだと指摘した。
「第1列島線」は元々、米国が中国を封じ込めるために設定したものだ。中国はその内側を「絶対国防圏」と位置付ける。
NSSは、トランプ大統領が特に求めていることとして「日本と韓国に防衛費増額を促す必要がある」と名指しした。
トランプ氏はこれまでも日米安全保障を「(同盟国の)ただ乗り」「不公平だ」と言い続けてきた。
政府はそのたびに事情を説明してきたはずだが、ここに来て公式文書で名指しするとはどういうことか。
南西諸島では自衛隊基地建設やミサイル部隊などの配備が急速に進んでいるが、それだけでは足りないという米側のメッセージなのか。
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米国が安全保障上、最も重視する地域は、中東ではなく、南北米大陸を中心とする「西半球」だと、NSSは強調する。
ベネズエラに対するさまざまな形での「力の行使」は、その表れである。
自国第一主義を地でいくような、優先順位の大転換が始まった。
米国にとって「西半球」の次に重要なのが「第1列島線」というわけだ。
中国は、東アジア海域に100隻を超える艦船を派遣し、大規模な海上軍事行動を行った。
小泉進次郎防衛相は7日未明、臨時会見を開き、沖縄本島南東の公海上空で、中国軍機が自衛隊機に対し、2回にわたってレーダー照射を行った、と発表した。
「第1列島線」を巡る確執は沖縄にもろに影響する。さらなる軍事要塞(ようさい)化への懸念は尽きない。
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高市早苗首相は、トランプ大統領との初の首脳会談で「日米同盟は世界で最も偉大な同盟」になったと述べ、米国との蜜月関係を最大限に演出した。
だが、高市首相の台湾有事を巡る国会答弁に端を発した日中対立に対し、トランプ大統領は自国の利益を優先し、冷静だった。
日本側の応援に回って中国の対応を公に批判するのではなく、高市首相に電話し、対立を懸念する声を伝えたのである。
高市首相に求められるのは、中国との関係改善を進め、地域の緊張を緩和する日本独自の対応だ。

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