人生最悪な日は、実は、その日に至るまでの、日々の積み重ねだったりする。
 つらい事が多かったある年の12月、近所の福引きで1等を当てた。
景品の大きな皿と人形を手に写真を撮られながら、ひどい一年だったけど、皿と人形でチャラにしよう!ってほほ笑んだ直後、係のおじさんに皿か人形かを選べと言われた。1等は2口だった。
 恋人と別れ結婚・出産の夢がついえた直後、同い年の唯一の友が結婚して出産して、飲み友達がゼロになった寂し過ぎた年の最後に、1等なのに皿か人形か…。涙が出た。
 ある日、マフィアの麻薬取引に巻き込まれたおとなしいお針子の最悪な一日は、彼女の暗くて最悪な人生の集大成のようだった。最善の未来を見いだそうと、あがく彼女を見つめながら、あの時、人形を選んだら、何かが違ったのかと思ってみたりしている。(桜坂劇場・下地久美子)
◇19日から桜坂劇場で上映
【桜坂劇場・下地久美子の映画コレ見た?】『世界一不運なお針子...の画像はこちら >>
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