自民党と日本維新の会が共同提出した衆院議員定数削減法案は、来年の通常国会に持ち越される見通しとなった。
 今国会は17日で会期末となるが、15日の時点でも、野党の反対で審議入りのめどは立っていない。

 議員定数の削減を政治改革の最重要項目と位置付ける維新は、「結論が出るまで会期を延長すべきだ」(吉村洋文代表)と主張する。
 だが、仮に会期を延長したとしても、今国会での成立は事実上不可能というしかない。
 法案の中身があまりにもひど過ぎるからだ。
 法案は(1)現行の定数465から1割を目標に、45人以上を削減する(2)1年以内に結論が出ない場合、小選挙区25、比例代表20を削減する-というものだ。
 くらくら目まいがするような乱暴な内容である。
 大島理森元衆院議長は、「議員数や選挙制度の議論はプロセスを大事にしなければならない」と指摘するが、事前に野党への相談はなかった。
 与党だけで削減数を決め、しかも期限内に結論が出ない場合、自動的に削減する規定まで盛り込んでいるのである。
 党利党略を優先した横暴な法案であり、野党が審議入りに反対するのは当然である。
 大島元議長は「議員数を減らすことは主権者の選択の幅を狭める可能性がある」とも指摘する。いったん法案を取り下げ、各党で議論すべきだ。
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 選挙制度の改革に当たっては、少数野党を含め国会の全会派が丁寧に議論し、合意形成を図っていくことが求められる。
 自民党はこれまで、野党の反対を押し切って各種の法案を強行採決してきたが、議員定数削減法案は数の力で押し切ればいいという性質の法案ではない。

 維新の吉村代表は、今国会に法案を提出したことで「約束は守ってくれている」と高市早苗首相を評価し、約束違反にならないとの考えを示した。
 今国会での成立をあれほど強調していた吉村代表の言動は何だったのだろうか。
 高市首相(自民党総裁)と吉村代表は16日にも会談し、今後の対応を協議するという。
 もともと今国会成立に消極的姿勢が透けた自民党にとっては、想定通りの展開だったはずだ。
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 今国会では、企業・団体献金見直し法案も焦点になっている。
 15日には衆院政治改革特別委員会で、与野党の3法案を巡り、参考人質疑が行われた。
 ただ与野党の意見の隔たりは大きく、この法案も会期内成立は困難視されている。
 議員定数削減法案に緊急性はない。だが企業・団体献金の見直しは、早急に取り組むべき緊急性の高い課題だ。
 高市政権になってからも、政治とカネを巡る問題が立て続けに表面化しているのだから。
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