国の「重点支援地方交付金」を活用した自治体の物価高対策が動き出している。
 那覇市は、年明け1月から3カ月分、水道料金の基本料金を免除する方針だ。
3カ月の合計で1世帯当たり約1800円安くなるという。
 非課税世帯などに限り「おこめ券」の配布も打ち出している。1世帯当たり10枚(4400円分)を予定する。
 さらに購入額に30%上乗せしたプレミアム付きのデジタル商品券も販売する。
 交付金を活用した物価高対策では、宮古島市が全市民を対象に、おこめ券を10枚ずつ配ることを決定している。
 17日に閉幕した臨時国会で、政府の経済対策の裏付けとなる2025年度補正予算が成立した。
 補正予算には、自治体が自由に使える重点支援地方交付金2兆円が盛り込まれている。うち4千億円が食料品高騰に対応する特別枠で、政府は1人当たり3千円相当のおこめ券やプレミアム商品券の発行を推奨する。
 交付金は住民に近い自治体に物価高対策の具体策を任せようというものだ。
 おこめ券を配布する場合も、非課税世帯に限るか全住民を対象にするか、内容は自治体が決める。
 政府の推奨メニューにとらわれず、地域ニーズを踏まえた創意工夫が求められる。何を必要としているのか、住民の声に耳を傾け、効果的な対策を競ってもらいたい。

■    ■
 政府が活用を促すおこめ券を巡っては、見過ごせない問題もある。
 おこめ券の販売価格は1枚500円だが、利用する際は発行経費などを差し引いた440円分の扱いとなる。住民への郵送費などを加味すると経費率はさらに高くなる。
 JA全農など発行元が限られていることもあり「利益誘導になるのでは」「高止まりが続くコメ価格の維持につながる」との批判がくすぶっている。
 その批判を回避するため通常より安い480円前後で販売する方針に変更されたものの、経費の問題からおこめ券を採用しない自治体が増えている。
 県外では、市民全員に現金3千円を給付すると発表した自治体もある。水道料金の支払口座を通じて契約者に現金を給付したり、給食費無償化に充てる対策を決めたところもある。
■    ■
 民間の調査で、1年前と比べ食料品の物価高を感じると答えた人の割合が、沖縄は全国で最も高かった。
 物価高対策は7月の参院選で最大の争点だった。
 しかし自民党の大敗、続く石破茂前首相の進退を巡る党内政局に時間が費やされ、「決められない政治」が続いた。
 あれから既に5カ月。動き出した自治体の対策も、おこめ券などが家庭に届くのは年明け以降だ。

 長期にわたる政治空白により政府の対応は後手に回った。
 自治体には対策の早急な実現を求めたい。 
[社説]自治体の物価高対策 実情踏まえ柔軟 迅速にの画像はこちら >>
編集部おすすめ