南城市政の立て直しを託されたのは、政党の支援を得ないで戦った大城憲幸氏だった。政治への信頼が揺らぐ中、刷新を求める市民の期待が表れたといえる。

 古謝景春前市長が職員へのセクハラ問題で失職したことに伴う南城市長選は、元県議の大城氏が、同じく元県議で自民、国民、公明が推薦する座波一氏を破り、初当選を果たした。
 前市長のセクハラ問題が表面化してから2年余り。第三者委員会による調査、市長への不信任決議、議会解散による市議選と、市は混乱を極めた。
 直面する最大の課題は、市政の信頼回復だ。
 大城氏は混乱が長期化した背景に市役所、市議会が機能しなかったことがあるとし、「役所改革」を強く打ち出した。
 政党や与野党の立場を超えた協調型市政の実現、やりがいや誇りの持てる風通しの良い職場環境を目指すとする。
 古謝前市長のセクハラ行為を認定した第三者委の報告書には「最も責任が重いのは市長だが、市幹部も被害について適切に対処しなかった」と、役所の機能不全を指摘する記述が随所にある。
 前市長のセクハラでは、今なお心を痛めている職員がいる。誹謗(ひぼう)中傷という二次被害にも苦しめられている。
 良好な職場環境の確立は、行政サービスの向上に直結する。
 被害者救済も、市民と社会の信頼を取り戻す改革も待ったなしだ。
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 2006年に1町3村が合併し南城市が誕生してから間もなく20年となる。

 人口は約4万7千人で11市の中では最も少ないが増加率はトップ。ただ市内には人口減少と高齢化が進む地域もあり、均衡ある街づくりが課題となっている。
 大城氏は、市の未来につながる「子育て支援」を政策のトップに掲げた。
 大学のキャンパスなど高等教育機関の誘致、少人数学級など特色ある教育の導入を訴えた。
 食料品の高騰に家計が悲鳴を上げる中、物価高対策もすぐに取り組まなければならない課題だ。国の重点支援地方交付金などを活用した支援策を早急に届ける必要がある。
 自転車で市内をくまなく回り、政策を訴えるというスタイルを貫いてきた大城氏。持ち前の粘り強さを生かし、指導力を発揮してもらいたい。
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 座波氏は県議や国会議員を動員し組織選挙を展開したが、及ばなかった。既成政党不信の流れや、古謝市政で副市長を務めたことも影響したのではないか。 
 大城氏はもともと保守系の政治家で、今回の市長選は保守系の「非自民対自民」という構図でもあった。
 前市長の失職という経緯を考えれば、「オール沖縄」勢力は有利に戦える環境にあったものの、候補を擁立できず大城氏を緩やかに応援する形をとった。

 投票率が過去最低の54・89%だったことは、争点がぼやけ政策論争が低調だったことと無関係ではない。
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