またも部活動の指導者による不適切指導が発覚した。なぜやまないのか。
根絶するには。一指導者の問題としてだけではなく、県全体の取り組みも求められる。
 日本学生野球協会は、暴言と体罰、報告義務違反があったとして、エナジックスポーツ高校野球部の監督を1年間の謹慎処分とした。
 監督は今年7月の県大会決勝で敗れ、泣き崩れた部員たちに「死ね、泣くな」などと暴言を吐いた。
 8月には県の新人大会に向かうマイクロバスに部員1人が乗り遅れたとして、試合後に球場から寮までの13・6キロを歩いて帰るよう命じた。別の指導者がバスに乗せたものの、監督は降車後に自身の車で球場近くまで部員を連れ戻し、再度歩いて帰るよう命じた。
 真夏の試合後のことである。しかも他の指導者の反対を押し切り執(しつ)拗(よう)に実行しており見過ごせない体罰だ。協会は、これを危険行為と判断した。
 監督は9月にも練習中に別の部員に対し約2メートルの近い距離から硬球を3度投げつけていた。部員にけがはなかったものの、こうした体罰が日常的に行われていたとすれば問題は根深い。
 体罰は学校教育法で禁止されている。
違法行為であるだけでなく、児童生徒の心身に深刻な影響を与える。
 背景には行き過ぎた「勝利至上主義」があったのではないか。指導者失格と言われても仕方がない。
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 同校の対応にも疑問符が付く。
 一連の不適切指導は10月、匿名の文書により発覚した。監督は11月、自ら自粛を申し入れたという。
 体罰や暴言は大勢の前で行われており、他の学校関係者も見聞きしているはずだ。にもかかわらず、匿名の訴えがなければ対策を取っていなかったとしたら大いに問題だ。
 不適切指導が露見したのは今月に入ってからだ。取材に対し校長は不適切な指導があったことは認めたものの、その内容や時期については「生徒や監督のプライバシー」を理由に明かさなかった。
 しかし、くだんの監督は副学院長でもある。そうした立場による体罰は学校全体にも関わる。

 他にも被害はなかったのか。体罰を受けた部員たちのケアはどうなっているのか。再発防止策は。学校はきちんと調査して結果を公表すべきだ。
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 部活動の指導問題を巡っては、2021年に県立高の空手部員が顧問から執拗な叱(しっ)責(せき)を受けて自死する痛ましい事案が起きた。
 県教育委員会は部活動指導に関わる全ての関係者が研修を受ける取り組みを実施している。
 しかし、私立高に関しては「依頼」の対応にとどまっている状況で、研修が徹底されているか把握していないという。
 不適切な指導を根絶するためには指導者の意識改革が欠かせない。公立、私立の枠を超えた取り組みが求められる。
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