[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1374)
 「手術」と聞くと、執刀医が華麗にメスを操る場面を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、その陰で患者さんの命を静かに守り続ける専門家の存在をご存じでしょうか。
それが麻酔科医です。今回は琉球大学病院麻酔科の取り組みと、普段なかなか知る機会のない手術麻酔の世界をご紹介します。
 麻酔科医の仕事は、単に「眠らせる」ことではありません。手術中はもちろん、手術前から手術後まで、患者さんの全身状態を良好に維持・管理することが主な役割です。術前の健康状態の評価から始まり、手術中の麻酔管理、そして術後の鎮痛まで一連の過程を担当します。手術中、麻酔科医は患者さんの血圧や心拍数、酸素濃度、体温などあらゆる生体情報を監視し続けています。まさに「手術室の航空管制官」のような存在で、執刀医が手術に集中できるよう患者さんの生命維持を一手に引き受けているのです。
 術前評価では、患者さんの病歴や現在の健康状態を詳しく調べ、最適な麻酔方法を選択します。心臓病や糖尿病などの持病がある場合は特に慎重な計画が必要です。
 麻酔導入・維持の段階では、全身麻酔の場合まず点滴から麻酔薬を投与して意識を失わせ、気管に管を挿入して人工呼吸を開始し、手術の進行に合わせて麻酔を調整し続けます。
 術後管理では、手術終了とともに麻酔薬の投与を停止し、患者さんが安全に目覚めるよう見守ります。術後の鎮痛治療も重要な仕事の一つです。

 琉大病院麻酔科は、県内の他の医療機関への医師派遣も行っています。離島医療が重要な沖縄において、専門医の技術を県内全域に届ける役割も担っています。また、集中治療やペインクリニック(慢性痛の治療)や緩和ケアも担当し、手術以外でも県民の健康を支えています。
 患者さんにとって麻酔科医は、安心して治療を受けられる環境をつくり出す重要なパートナーです。普段は目立たない存在ですが、確実で安全な医療の提供に欠かせない専門家として、今日も医療現場で活躍しています。
 中村清哉琉球大学病院麻酔科(宜野湾市)=第2、4水曜日掲載
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