在沖米海兵隊の国外移転計画において中核となる部隊だったはずだ。その移転が中止になったとすれば、再編計画そのものが破綻したことを意味する。

 米海兵隊がキャンプ・シュワブなどを拠点とする第4海兵連隊について、従来の歩兵連隊として維持する方針を示していたことが分かった。
 日米両政府は2006年、グアム移転を含む在日米軍の再編計画に合意。その後、計画を再調整し12年、在沖米海兵隊の隊員約9千人とその家族の国外移転を合意した。
 うちグアムには4千人以上が移転予定とされ、昨年12月、ようやく先遣隊100人がグアムに移転した。
 今後、第4海兵連隊、第3海兵遠征旅団(キャンプ・コートニー)、第4戦闘後方支援大隊(キャンプ瑞慶覧)の全員か一部を移転することになっていた。
 海兵隊は昨年、グアム移転後には第4海兵連隊を海兵沿岸連隊(MLR)に改編する意向も示していた。
 それが一転、ことし10月末に公表した海兵隊の将来像を描く「フォースデザイン改訂版」で改編の中止を示唆。第4海兵連隊をそのまま第3海兵遠征軍に残す方針が示されていたのである。
 移転計画に伴う日本側の負担総額は上限約28億ドル。昨年7月時点ですでにその約98%となる27・5億ドルが拠出されている。
 それにもかかわらず、移転計画の柱となる部隊が残るとは一体どういうことなのか。
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 背景には、対中国を念頭にした米軍の新戦略構想「遠征前方基地作戦(EABO)」がある。

 南西諸島から台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」上に少人数で分散しながら対艦ミサイルやレーダーなど臨時拠点を設置する戦略だ。
 第1次トランプ政権下の2019年の当初から、海兵隊の中では、戦略上グアムからは遠すぎるとして移転見直しを求める声が上がっていた。
 今年に入り、在沖米海兵隊トップや太平洋海兵隊司令官らが相次いで移転への懸念を表明。今回の改編中止方針は、こうした海兵隊の意向が示されたことにほかならない。
 海兵隊のグアム移転は沖縄の基地負担軽減も大きな目的だった。そのため日本政府が巨額の移転費用を負担した経緯がある。
 政府には米側の意向をただし、県民へ説明する責任がある。
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 中国への対処を念頭に日米の軍事一体化が進む。日米合同訓練も活発化、大規模化の一途をたどっており、県内ではさらなる基地負担増への懸念が増している。
 移転計画では、グアムのほかハワイやアメリカ本国への移転も合意された。
 しかし、移転開始の時期すらいまだに示されていない状況だ。
 このまま進捗(しんちょく)がうやむやにされるようなことがあってはならない。

 日米両政府は、日米合意を着実に実行すべきだ。 
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