医療費の自己負担を抑える「高額療養費制度」について、政府は来年度から負担の上限額を段階的に引き上げる方針を決めた。所得によっては、現行の月額約8万円が約11万円と、最大38%も増える。

 高額療養費の見直しを巡っては、昨年末に月額上限を最大70%超引き上げる政府方針が示された。
 患者の声も聞かず、急で過酷な改定に不安や批判が続出。長期にわたって高額な治療を続けなければならないがん患者らは「命の切り捨てだ」「治療を諦める患者が出る」と猛反発し、今年3月、石破茂首相が凍結した経緯がある。
 今回示された政府方針は、引き上げ幅を前回の約半分まで軽減。さらに年間の負担上限額も設定し、平均的な年収区分だと53万円とする。
 一定の配慮がなされたとはいえ、家計の状況により負担感は異なる。
 治療や投薬の影響でフルタイムで働くことが難しい患者にとっては、月額数千円の負担増が、家計を追い詰めることにもなりかねない。
 がん患者団体は、今回の政府方針に対し「毎月の限度額が十分に抑制されたとはいえない」「治療断念や生活破綻につながらないよう、さらなる検討を」と声明を出した。
 患者の命綱といえる重要な制度である。引き上げによる影響を見極め、より良い方向を目指す「不断の改革」が不可欠だ。
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 市販される医薬品と成分や効能が似た「OTC類似薬」についても、患者の負担割合が引き上げられる見通しとなった。
 解熱鎮痛剤「ロキソニン」や抗アレルギー薬「アレグラ」など、一般的に広く知られたおなじみの薬剤のほか、一部の湿布薬、胃腸薬などにも料金が上乗せされる。

 気軽に病院で処方してもらえる上に「薬局で買うより安い」などの思いから、もらいすぎて家にたくさんある、という人も多いのではないか。
 一方で身体の痛みや不快感を軽減させ、日々のQOLを高めるのに不可欠な「家庭の常備薬」とも言えるはずだ。中には「これがないとだめ」など、個人にとって大切な薬となっている可能性もある。
 処方薬と市販薬との価格の適正化を図りつつ、特に低所得者層や慢性疾患患者に対する配慮策を講じることも忘れてはならない。
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 2年に1度行われる診療報酬改定では、医師の人件費や技術料に当たる「本体」部分を3・09%引き上げることを決定した。30年ぶりの高い改定率で、物価高騰や人件費上昇で打撃を受ける医療機関に配慮した形だ。
 とはいえ、引き上げ分の報酬をどう確保するのか。医療費の伸びをどう抑えるのか。高額療養費改定やOTC類似薬の負担引き上げは、政府の医療費抑制策の一つでもある。
 将来を見据え、誰もが安心して暮らせる医療体制の構築に向けて丁寧で慎重な議論が今後も必要だ。
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