沖縄戦当時、宜野湾村の助役を務めていた桃原亀郎さんは、1946年1月1日の日記に新年を迎える心構えを書き残している。
「本年は、新天地創造の年也(なり)。本年は、物心革命の年也。本年は、沖縄建設の第一歩也」
「決して他に対し命令をするな。決して他に対して屈従をするな」
日記には敗戦の原因についての分析と、自分を奮い立たせるような決意の文章がつづられている。
桃原さんに限らず沖縄再建に立ち上がったリーダーたちが当時、共通に口にしたのは「復興」「自治」「平和」だった。
米軍統治下にあって、そこに将来への希望を見いだしたのである。
朝鮮戦争が起こり、サンフランシスコ講和条約で沖縄が本土から切り離されたことで、沖縄は「軍事優先の島」へと暗転する。
そして今。沖縄が再び戦争に巻き込まれるかもしれないという不安が、現実味を帯びて語られるようになった。
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トランプ米大統領の政策転換によって、米国主導の国際秩序が崩壊の危機に直面している。
年の瀬に、ロシアはウクライナに大規模な無人機攻撃を加え、米国は麻薬積載を理由にベネズエラの港湾施設を攻撃した。
中国は台湾を取り巻くように軍事演習を実施し、日米台の動きを武力で威嚇、けん制した。
紛争の平和的解決は、国連の最も重要な基本原則であるが、3大国が武力の行使、武力による威嚇を行っているのである。
深刻な事態だ。今や世界全体が軍事と暴力に覆われているような印象すら受ける。
国連の報告書によると、世界の軍事支出は2024年に過去最高を記録した。
軍備増強が著しい中国に対抗する形で日本は、防衛費を大幅に増額した。
高市早苗首相の台湾有事発言に端を発した日中対立は収まる気配がない。
戦争を回避することよりも、戦争に備えることに世論の支持が集まるようになった。
私たちが最も懸念するのは、日中関係の悪化に伴い、両国の国民感情が引きずられるように悪化し、対立が深まっていくことだ。
その結果、政治家は世論を意識して強い言葉を発するようになり、対話による解決の道はますます遠ざかる。
日本の植民地であった時代から現代に至るまで、台湾と沖縄の関係は深い。
その関係を土台にして、戦争をどう回避するか、私たちに何ができるかを考えたい。
戦争が起きてからでは遅い。
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沖縄には「ちむぐりさ」(肝苦りさ)という言葉がある。かわいそうというのとは、少し違う。
人の苦しみや悲しみに接して、その痛みを分かち合おうとする心の働きのことである。
沖縄戦体験者と向き合ってきた臨床心理士で沖大教授の吉川麻衣子さんは昨年末「ちむぐりさの語り合い」というサイトを開設した。
「沖縄戦を生きぬいた人びとが、数十年の沈黙の奥から言葉を紡ぎ出し、ともに語り合い続けてきた記録」だという。
沖縄戦を体験した人々の中には、パレスチナ自治区ガザの惨状に接し、心を痛め、支援に立ち上がった人が少なくない。それが「ちむぐりさ」なのだと思う。
個人の尊厳を脅かす最大のものは戦争だ。
沖縄戦の際、県の人口課長として疎開業務に携わった浦崎純さんは、戦場を逃げ惑う中、母の死体にすがって乳房を含んでいる幼子を見た。
あまりにも悲惨な光景に、胸が締め付けられた。
「戦争は絶対に避けねばならぬ。これは人類の悲願である」と、戦後の著書に書いている。
難しい理屈や情勢論から平和を考えるのではなく、自分ごととして、沖縄の歴史経験を踏まえ、平和を考えたい。
東アジアの「非戦・共生」を実現するために。

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