[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1375)
 「皮膚の発疹は、持病の乾癬(かんせん)ですね」
 50代の女性が肺炎で入院したとき、誰もがそう考えていました。乾癬の既往がある方で、見た目もそれらしく見えたからです。
診断はもうついたように思えました。
 ところが入院中、少し気になる行動が目につきました。言葉がちぐはぐで、普段の彼女らしさが失われている。アルコール依存の過去があるので「もしかすると離脱症状か」と思いましたが、ご本人もご家族も「お酒はずっとやめています」と言います。「本当にそう決めつけていいのだろうか」と、立ち止まって考え直すことにしました。
 そこで日常生活を丁寧に聞き直すと、「下痢が続いている」との答え。そこで「もしかして栄養の問題かもしれない」と視点を変え、ビタミン不足による病気、ペラグラ脳症を疑いました。必要な栄養素を補う治療を試みると、あれほど続いていた奇妙な行動も、足にあった発疹も、うそのように消えていったのです。回復を喜ぶご本人とご家族の笑顔を見て、こちらまで胸が熱くなりました。
 この経験から学んだのは「決めつけは良くない」ということです。人はつい、過去の病気や見た目の印象に引きずられてしまいます。でも体の不調は生活習慣や心の状態とも深くつながっており、背景まで含めて見つめたときに初めて正しい道筋が見えてくると痛感しました。

 最近話題になった医療ドラマ「19番目のカルテ」でも、総合診療医が描かれていました。専門分野を持たない“何でも屋”のように見えるけれど、実際は患者さんの困り事に最初に寄り添い、その人全体を診ていく存在です。病名よりも、その人の暮らしや心に光を当てる姿に、多くの方が共感されたのではないでしょうか。
 総合診療科は、まさにそういう場所です。症状だけを診るのではなく、人を丸ごと診る。診断名の向こうにいる「その人」を見落とさないようにすること。それが、患者さんやご家族の安心に結びつき、医療への信頼を支えていくのだと信じています。(湧川朝雅・那覇市立病院総合診療科=那覇市)
「患者の困り事に寄り添う」 人を丸ごと診る総合診療医 医療ド...の画像はこちら >>
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