被告は殺人罪については起訴内容を認めており、争点は「宗教的虐待」の被害者という境遇が、量刑に考慮されるかどうかだった。
結果、裁判所は全ての起訴内容を認定し、「生い立ちは犯行に大きく影響しておらず、酌むべき余地も大きくない」と判断した。動機に直結しているとされた悲惨な境遇は考慮されなかった。
事件は、参院選を2日後に控えた2022年7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で約300人の聴衆が詰めかける中で起きた。
被告の家庭は、母親が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に入信し、総額1億円に上る献金をしたことで崩壊、家族は困窮を極めた。
弁護側は昨年12月の最終弁論で「宗教が関わった虐待の被害者であるという視点が不可欠だ」とし、「最も重くても懲役20年までにとどめるべきだ」と主張していた。
しかし判決は「多数の聴衆がいる現場で銃を発射した悪質性は、他の事件と比べても著しく重い」と結論付けた。結果の重大性を重視したのだろう。
いかなる理由があるにせよ、問答無用の銃撃によって政治家を殺害する被告の行為は肯定できない。暴力による解決もあってはならない。
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事件は、元首相が街頭演説中に襲われるという衝撃に加え、教団への高額献金被害、「宗教2世」の問題など、社会にさまざまな課題を突き付けた。
被告の母親は、自死した父親の生命保険金も献金につぎ込んでいる。経済的困窮から被告は大学進学を断念。
公判を通して強く印象に残ったのは、「家の中で地獄のような時間を過ごした」という被告や妹の言葉。「自分の将来を失った者の絶望の果ての犯行」という弁護側の最終弁論だった。
被告の宗教2世としての境遇が明らかになると、当事者たちは「まさに自分のこと」と感じたという。
一方で宗教2世を救済する窓口の乏しさも指摘された。子どもがSOSを出せる環境づくりなど国の支援が急務である。
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被告は、安倍氏が教団の友好団体にメッセージを寄せたことに「教団が社会的に認められてしまう」という「絶望と危機感」を持ったと語っていた。
事件をきっかけに自民党議員と教団側の接点が相次いで表面化。自民党は関係を絶つとしたが、安倍氏ら歴代首相との関わりなど未解明な点は残ったままだ。
そして、ここにきて日本での政治的な活動を伝える教団の内部文書が波紋を広げている。教団を巡る問題は終わっていない。
「絶望の果ての犯行」を再び起こさせないためにも、背景にある問題に社会全体で向き合う必要がある。

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