沖縄県立コザ高校の元空手部主将の男子生徒が、顧問から暴言を伴う叱責(しっせき)を受けて2021年に自死してから30日で5年となった。「二度と抱きしめることはできない」。
最愛の息子を亡くした母親の苦しみは今も続く。「同じ過ちを繰り返してほしくない」と、不適切な指導の根絶へ社会の理解が深まることを望んでいる。(社会部・新垣亮)
 「気持ちの整理がついていない部分もある。つらくて前に進めないこともあるが、日常生活で紛らわしている。『お母さん頑張っているから見ててね』という感じで…」と、母親は声を振り絞った。
 問題の発生から学校の取り組みを注視してきた。同校は昨年、命日の1月30日を「命の尊さを考える日」に制定。今年も集会を予定しており、数日前に生徒の打ち合わせをのぞく機会があった。当時小学6年だった生徒が再調査委員会の報告書を活用し、「この日を風化させない。自分たちはどうするべきか」と語り合う姿に救われる思いがした。
 教員研修には、息子が過度な指導を受けて自死した大貫隆志さんを県外から講師に招いた。大貫さんには母親自身も当初から支えてもらった経緯があり、「学校側は以前と比べて少しずつ問題に向き合えているのではないか」と実感する。

 他校の部活動では、今も不適切な指導やスポーツハラスメントの発覚が続く。ニュースに触れるたび、「人権に対する意識が広く浸透しきっていないのではないか」と胸が痛む。学校や行政の相談窓口はきちんと支援につながっているか、子を守る体制づくりは形骸化していないか。それが気がかりだ。
 息子は教員や保護者の間に漂っていた暴力を黙認する空気にも追い詰められたのでは、と考えている。「輝かしい実績や伝統があったとしても、不必要な暴言やプレッシャーで生きることを諦めてしまった子がいた事実を忘れないでほしい」と強調。「学校だけではなく社会の全ての人が不適切な指導に対して良識ある言動を起こす勇気を持ってほしい」と望む。
 20歳を過ぎた中学の友人は今でも自宅に集まる。最近も釣った魚を差し入れてくれた子がいた。友人の心の中に息子が生き続けていることを感じてうれしい半面、息子の成長を見守ることができず複雑な心境もある。母親は「どこまでできるかは分からないけれど、命の尊さを周囲に伝えていきたい」と静かに語る。
「風化させない」と語り合う後輩の姿に希望 沖縄・コザ高校の部...の画像はこちら >>
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