衆院選は、高市早苗首相率いる自民党が過去最多の316議席を獲得した。定数465の3分の2を超える歴史的圧勝を遂げた。

 日本維新の会と合わせると衆院で352人の巨大与党になる。高市氏は来週にも召集される特別国会で改めて首相に指名される。
 高市氏は9日夕の会見で「政策転換をやり抜けと力強い形で背中を押していただいた」と強調した。
 歴史的な勝利の背景にあるのは国内に広がる不安と閉塞感だ。
 経済面では少子高齢化による労働力人口の減少、低迷する労働生産性、製造業の国際競争力低下など長期的な地盤沈下が顕在化している。安全保障環境においても中国や北朝鮮などの「脅威」への不安が国民に広がっている。
 そうした中、積極財政や防衛力強化など「強く豊かに」というスローガンが広く支持された。
 ただ、社会を覆う沈滞ムードは長年の自民政権が招いた一面もある。
 長引く経済低迷は「安倍1強」時代のデフレ進行の影響が大きい。派閥裏金問題や旧統一教会とのつながりは政治不信を招いたほか、最近の中国との関係悪化は高市氏自らの発言が発端となっている。
 選挙で高市氏は安全保障政策や憲法改正などについてほとんど語っていない。圧勝を理由に「国民を二分する政策」を独善的に進めることはあってはならない。

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 一つの政党が衆院で3分の2を獲得したのは戦後初めてだ。与党が過半数を割る参院で法案が否決されても衆院で再可決できる。
 国会はほとんどチェック機能を果たすことができず、行政府の「追認機関」となる恐れがある。
 中道改革連合は公示前の172から半数以下の49に減らす惨敗となった。野田佳彦、斉藤鉄夫の両共同代表は「万死に値する責任」として辞任を表明した。
 安保法制やエネルギー政策などで公明党に譲歩し与党への対抗軸を打ち立てられなかったことが大きい。比例で公明出身議員が議席を増やした一方、小選挙区では立憲民主党の大物議員の多くが落選した。
 民主主義の理念を守り「熟議」の国会を実現するにはチェック機能を果たせる野党の存在が必要だ。敗因の総括が求められる。
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 トランプ米大統領は自民の圧勝について「力による平和」の実現へ期待を寄せるSNS投稿をした。
 高市氏は改めて安保関連3文書の改定を急ぐ考えだ。武器輸出拡大や「非核三原則」の見直しなどを進めるとみられる。
憲法改正についても「少しでも早く国民投票の環境をつくる」と意欲を示した。
 だが、国の在り方に関わる政策を「数の力」で押し切るやり方は認められない。少数の意見にも丁寧に耳を傾ける政権運営を求めたい。
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