[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1377)
 皆さんは「運動器」という言葉をご存じでしょうか。循環器や呼吸器、消化器はなじみ深いと思います。
これらと同じように、運動器は特定の機能を担う臓器群をまとめた言葉で、骨・関節・筋肉・神経など、体を動かす仕組み全体を指します。
 この運動器が弱ってしまう状態を「ロコモ」と呼びます。おなかに脂肪がたまった状態を「メタボ」と呼ぶことは広く知られていますが、ロコモという言葉は一般には十分浸透していません。メタボが進行すると高血圧や糖尿病を合併し、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中へとつながるように、ロコモも骨粗しょう症やサルコペニア(筋肉が減り力が弱まる状態)を合併し、転倒や骨折を引き起こします。
 実際、大腿(だいたい)骨の付け根の骨折である「大腿骨近位部骨折」は著名人にも少なくありません。女優の研ナオコさんや木の実ナナさん、吉行和子さん、赤木春恵さんがこの骨折を経験しました。最近では上皇后・美智子さまも転倒し、同じ骨折を受傷されたことが報じられました。これは特別な話ではなく、多くの高齢者に起こりうる現実です。
 県整形外科医会では、この骨折の県内発生数を毎年調査しています。2023年調査では男性730人、女性1769人でした。沖縄は全国でも発生率が高い一方で、骨粗しょう症の治療率は依然として低い状況です。大腿骨近位部骨折は寝たきりや要介護につながり、健康寿命を縮める大きな要因です。

 「自分は大丈夫」と思っている方も少なくないでしょう。しかし加齢とともに体力は確実に低下し、油断しているうちにロコモや骨粗しょう症にもなり、気づけば骨折してしまうのです。メタボもロコモも生活習慣が大きく影響しますが、裏を返せば、日常の工夫と予防でリスクを減らせる病気です。
 私たち整形外科医は、骨折により大変な思いをされる患者さんを日々診ています。その経験から、ロコモ予防の重要性を強く訴えます。体力の衰えを感じてきた今こそ、運動や食生活に少し工夫を加え、転ばぬ先の備えを始めていただければ幸いです。(大湾一郎・沖縄赤十字病院整形外科=那覇市)
健康寿命を縮める「ロコモ」 加齢とともに転倒や骨折引き起こす...の画像はこちら >>
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