売買春を禁止する一方で、「売る側」にしか処罰規定のない売春防止法について、法務省は来月にも有識者検討会を立ち上げ、改正への議論を始める。
 不均衡さを指摘し、改正を求める声は以前から出ていた。
「買う側」に対する処罰の是非が大きな焦点となる。
 売春防止法は1956年に制定された。売春を「対価を受け取り、不特定の相手と性交すること」と定義した上で「何人も、売春をし、またはその相手となってはならない」と禁じている。
 しかし処罰の対象は、あっせん行為や公衆の面前での勧誘、客待ちなど、売る側の行為だけだ。
 悪質ホストクラブに多額の借金を背負わされた女性客が、返済のために東京都内の公園で客待ちし、摘発されるケースが社会問題となっている。
 昨年11月には、東京の個室マッサージ店で12歳のタイ人少女が性的サービスに従事させられていた事件が発覚し、社会に大きな衝撃を与えた。
 経営者らが逮捕されたものの、買春した男性らの責任は問われていない。
 昨秋の衆院予算委員会で売る側だけを処罰する同法の歪(ひず)みが問題視され、法改正を求める声が一層強まったことを受け動き出した。
 有識者検討会は弁護士や裁判官、検察官のほか刑事法学者らで構成される。不均衡な処罰規定を適正に見直し、時代に即した法整備に向けて活発な議論が必要である。
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 世界では、スウェーデンが採用した買う側を処罰する「北欧モデル」が、フランスやカナダなど各国に広がっている。
 売る側を「暴力の被害者」と捉えて保護する一方で、買う側や業者だけを処罰するのだ。

 これまで売春は「売る側が自ら選択した」と自己責任論にされがちだった。しかし女性らへの聞き取り調査から、人身取引による強制的なケースのほか、虐待や貧困から抜け出すためだったことも分かっている。
 フランスは2016年に買春処罰法を制定。買春した側に数十万円の罰金を科し、売春した側への罰則をなくした。さらに、売春から抜け出したい女性らに宿泊場所を提供し、就職に向けた支援なども盛り込んだ。
 日本の売春防止法は第1条に「売春が人としての尊厳を害し」と記す。真に女性の尊厳を守る法律に変えていく必要がある。 
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 貧困や虐待、孤立にもがく中で支援につながらず、やむを得ず路上に立つ女性は少なくない。
 買春者への取り締まり強化に関する議論にとどまらず、悩み苦しみながらも性産業に従事せざるを得ない女性を支える取り組みも欠かせない。
 客引きをする女性らを救い支援する団体の声にも耳を傾け、実情を知ることも重要だ。
 売春による被害を社会の問題として捉え、女性の人権と尊厳を守る法整備が不可欠となっている。
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