成年後見制度を利用する人は警備員として働けないという旧警備業法にあった「欠格条項」を巡り、最高裁大法廷は、「制度利用者を一律で排除する不利益は看過できない」として、違憲とする初判断を示した。
 旧警備業法は、1982年に禁治産者や準禁治産者は警備員になれないとする規定が追加され、その後、成年被後見人と被保佐人に改められた。

 提訴した30代の男性は、軽度の知的障がいがあり、警備会社で交通整理の仕事を任されていたが、何の問題もなかったという。自身の財産管理に不安を抱え、2017年に家裁の審判で障がいのある人を支援する保佐人を付けることが確定した後、会社から契約終了を通知され退職に追いやられた。
 成年後見制度は、判断能力に不安がある人の財産管理や契約を支援する制度だ。障がい者の自立を支援するはずの仕組みが社会参加を阻んでいた。
 欠格条項は、制度利用へのためらいや障がい者への差別と偏見につながると批判され、19年に同様の規定を設ける約180の法律と合わせて、一括削除された。
 判決では遅くとも原告の男性が警備会社を退職した17年3月時点では、職業選択の自由を定めた憲法22条と法の下の平等を定めた同14条に違反するとした。 
 最高裁の法令違憲判断は14例目。司法も障がい者を特別視せず、個人として尊重する「ノーマライゼーション」を重視する流れとなった。判断は当然である。
■    ■
 当事者の気持ちを考えれば、不満はなお残る。
 一審岐阜地裁判決は欠格条項を違憲として国に10万円の賠償を求める判決を言い渡した。さらに二審名古屋高裁が50万円に増額し国に賠償責任を求めていた。

 しかし、最高裁は一転、法の見直しにも相当な時間が必要だったとして「国会が長期にわたり立法措置を怠ったとはいえない」と賠償責任は否定したのである。
 ただ、裁判官15人のうち5人が「国会の立法不作為は違法」などと指摘している。賠償命令に踏み込むべきだった。 
 「警備員の仕事にやりがいを感じていた。なぜ辞めなければならなかったのか」。本人に落ち度がないにもかかわらず、障がいを理由に仕事を奪われた。
 欠格条項を改廃しなかった国会の責任は重い。
■    ■
 14年の国連障害者権利条約の批准や16年の障害者差別解消法施行で、労働者への差別は禁止されるべきだとする考え方が確立した。
 成年後見制度を巡る欠格条項は解消されたが、障がいなどを要件とした欠格条項は多くの法律に残る。不断の点検が必要だ。
 障がい者への差別や偏見は根強い。障がいがあるからと就業の道を閉ざすのではなく、一人一人の能力や意欲を公正に見極めた上で、それを後押しする環境を社会全体で整えていく必要がある。
個人の尊厳と個性を最大限に尊重しながら、共に生きる社会の実現を目指したい。
編集部おすすめ