高市早苗首相が就任後初の施政方針演説を行った。
 「力強い経済政策と力強い外交・安全保障政策を推し進めるべく、広範な政策を本格的に起動させる」
 冒頭のこの言葉が示すように、衆院選の大勝を自信に強気の姿勢と「高市カラー」が色濃い演説だった。

 全分量の5割近くを充てた経済財政政策では、経済成長実現のために必要な財政出動をためらわず「成長のスイッチを押しまくる」と意気込んだ。
 経済安全保障などの「危機管理投資」、人工知能(AI)や半導体などへの「成長投資」で世界共通の課題解決に役立つ製品やサービス、インフラを開発し、国内外に提供することで日本の成長につなげるという。
 一方で、これまで経済成長を妨げてきた人口減少・少子高齢化などへの言及は少なく、解決のめどは立っていない。
 衆院選で公約に掲げた2年間限定の飲食料品の消費税率ゼロについては、赤字国債に頼らない財源の在り方など課題の検討を加速すると表明した。夏前には中間取りまとめを行い、税制改正関連法案の早期提出を目指す。
 実現すれば年5兆円規模の税収減となる。積極的な財政出動が加われば、さらにインフレが進みかねない。円安、長期金利上昇のリスクも高まる。
 「責任ある積極財政」というなら、その財源、社会保障制度の持続性についても責任を持って語らなければならない。
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 外交・防衛について首相は「日米同盟は日本の外交・安全保障政策の基軸」だとし、米軍普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し辺野古への移設工事を進めると、昨年10月の所信表明と同じ考えを繰り返した。
 普天間の移設を巡っては、米国防総省が、新基地が完成しても長い滑走路を別に確保しない限り普天間を返還しない考えを公式文書で示したことが明らかになったばかりだ。米海兵隊の現役中佐が普天間を「キープ」して日米での共同使用を求める論文を発表したことも分かっている。
日本政府が主張してきた「辺野古が唯一の解決策」と相反するものだ。
 衆院選のさなかにもマンホールからPFASを含む白い泡が噴き出したり、県や自治体が中止を求める嘉手納基地でのパラシュート降下訓練が強行されたりした。
 首相は、目に見える基地負担軽減策を責任を持って示すべきだ。
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 施政方針で憲法改正について「国会における発議が早期に実現されることを期待する」と踏み込んだ。
 国会は、熟議を尽くし幅広い合意形成を図る場だ。国の基本となる憲法だけに少数意見にも耳を傾け、時間をかけて結論を出すことが重要となる。
 日米の軍事一体化や防衛力の抜本的強化が進む中、9条の制約が取り払われれば「基地の島」である沖縄は今以上に負担を強いられかねない。「数の力」で押し切ることは許されない。
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