JA側の会見で浮き彫りになったのは、長時間労働がもたらす健康被害に対する組織全体の認識の欠如だ。管理体制の抜本的な改善を求めたい。

 JAおきなわの職員が、月200時間超の時間外労働による過労で脳出血を起こし、左半身まひの後遺障害が残ったとして今年1月、労災認定を受けた。
 職員はマンゴーの選果・販売に従事していた。昨年6月15日から7月18日まで34日間連続出勤した後、自宅で倒れているところを家族に発見された。
 出荷シーズンで毎朝7~8時ごろ出勤し夜8~10時に退勤する日が続いたという。倒れる10日前からは連日深夜まで残業していた。
 時間外労働は計242・5時間に上る。厚生労働省が定める過労死ラインは「月100時間以上」で、その倍以上だ。これほどの長時間労働がなぜ放置されていたのか。
 職員は、人員不足が常態化し繰り返し改善を求めてきたが「(上司は)見て見ぬふりした」と話す。
 問題が表面化したことを受けJA側の経営幹部5人が会見。冒頭、安谷屋行正理事長は「法令を大幅に逸脱する不適切な労務管理により、深刻な健康被害に見舞われた事実を極めて重く受け止めている」とし、職員と家族に謝罪した。
 だが、失った健康は取り戻せない。
職員は車椅子での生活を余儀なくされ、後遺症の高次脳機能障害で感情のコントロールも難しくなった。
 対応はあまりに遅過ぎたと言わざるを得ない。
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 倒れる4日前には職員から上司にメールで「現場は逼(ひっ)迫(ぱく)している」との悲痛な訴えもあった。メールを確認した上司は3人。応援要員を派遣したとするが、職員の仕事が減ることはなく深夜までの残業はその後も続いている。
 職員を休ませようとする配慮は感じられず、管理職の対応として甚だ疑問だ。
 組織のリスク管理にも疑問符が付く。
 農作物の出荷には繁忙期がある。会議などで人員不足を訴える声も出ていたが、「人がいない」と一蹴されたという。繁忙期は長時間労働も当たり前という組織風土があったのではないか。
 長期間にわたる残業は健康に悪影響を及ぼす。必要な人員の配置は当然の安全配慮義務であり、経営の責務だ。
現場任せにすべきではない。
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 長時間労働を制限する働き方改革は、広告大手の新入社員の過労自殺をきっかけに進んだ。関連法が2019年から施行され、24年からは一部猶予されていた事業者についても適用されている。
 一方、人手不足の慢性化などを背景に昨年、高市早苗首相は厚労省に対し労働時間規制緩和の検討を指示している。
 だが、法の趣旨が十分に浸透しているとは言い難い。
 過労による死亡や疾患は依然として多い。長時間労働に苦しむ人をこれ以上増やしてはならない。
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