双方が友好ムードの演出に腐心し、会談の成功をPRしたが、「戦時下の日米首脳会談」で露呈したのは、日本の立ち位置の危うさだった。
 米ホワイトハウスは、トランプ大統領と高市早苗首相の写真をX(旧ツイッター)に投稿し、首相の発言のある部分を切り出して紹介した。

 「世界中に平和をもたらせるのはドナルドだけだと思っています」
 高市首相は確かに、そう言った。米国に対する日本の「ご機嫌取り」は、今に始まったことではないが、ここまでこびるとは驚きだ。
 ベネズエラ攻撃、イランへの奇襲攻撃と最高指導者の殺害、キューバへの圧力。
 先月末のイラン攻撃では、何の罪もない子どもらが160人以上も殺された。米国が国際法を無視して行った軍事行動は枚挙にいとまがない。
 「お世辞外交」と同時に、もう一つ浮き彫りになったのは「朝貢外交」である。対米投融資の第2弾として11兆円を超えるプロジェクトをお土産として持参した。
 トランプ氏は夕食会で、米国の防衛装備品を大量購入する方針を示していることを歓迎すると述べている。
 何をしでかすか、何を言い出すか分からない「トランプ・リスク」に対応するためには、経済・安全保障の多角化を進め、対米依存度を下げる必要がある。
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 北大西洋条約機構(NATO)の国々や、日本、韓国などの同盟国は、米国からイランが事実上封鎖するホルムズ海峡への艦船派遣を求められた。
 旗を見せろという要求に従って艦船を派遣すれば、間違いなく敵国と見なされる。米国が事前の相談もなく国連の決議もないまま攻撃を始めた戦争に、なぜ加担しなければならないのか。

 首脳会談でトランプ氏は、海峡の航行の安全確保に向け、日本の貢献を求めた。
 高市首相は、交戦中の艦船派遣について国内法の制約を抱える日本の立場を伝えたが、米国の圧力は今後も続く恐れがある。
 ここで、さらに別の日本の立ち位置の危うさが浮かび上がった。
 高市首相はイラン攻撃の問題点には触れず、ホルムズ海峡を封鎖し周辺国を攻撃するイランだけを非難したのだ。
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 会談後に発表された文書によると、台湾海峡の平和と安定について、武力や威圧を含むいかなる一方的な現状変更の試みにも反対することで一致している。
 日本外交は、法の支配という価値観を前面に掲げ、力による現状変更の試みを批判してきた。
 米国のベネズエラ攻撃やイランへの奇襲攻撃は不問に付し、ロシアや中国の力による現状変更の試みだけを批判するのは、二重基準と言われても仕方がない。
 日本は今もこれから先も、国際法・国連憲章に基づく国際社会のルールを守る側に立つべきだ。
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