第77回沖展がANAアリーナ浦添で開幕した。
 今年は、若い世代の活躍が目覚ましく、一般応募作品から選ばれる「奨励賞」に高校生2人が入賞し、話題になっている。

 写真部門の奨励賞に選ばれた中山鈴花さん(18)の「威厳」は、白いひげを蓄えた老境の男性を正面から撮ったモノクロのポートレート作品だ。顔に刻まれたしわや憂いのある瞳が見る者に何かを訴えかける。
 中山さんは、1日に浦添工業高校デザイン科を卒業したばかり。写真部の撮影会で訪れたうるま市の浜比嘉島で「一目ぼれ」して被写体に選んだ。
 「地上戦があった沖縄で生きてきた重みを感じさせる人だった。『根差す』が私のテーマ。沖縄に根差した作品が、沖縄の展示会で評価されたのはうれしい」と語る。
 同じ浦添工業高校デザイン科2年、嘉数姫泉さん(17)の「碧楓(へきふう)」は彫刻部門で奨励賞に選ばれた。
 陶芸技法の「たたら作り」を取り入れ、エメラルドグリーンの釉薬(ゆうやく)で沖縄の海を表現した。量感のある作品は角度によって形が違い、想像をかき立てる。
 初挑戦で奨励賞に輝いた嘉数さんは「沖縄を伝える作品ができた」と話す。
 沖展は、沖縄戦で焼け野原となった郷土の再建を願い、文化の力で人々の心を支えようと、沖縄タイムス創刊1周年を記念して1949年7月に始まった。

 77回の歴史の中で、若い才能を発掘し、育てる場にもなってきた。若い世代の活躍は、その歴史が脈々と続いていることを感じさせる。
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 会場には絵画や版画、彫刻、グラフィックデザイン、書芸、写真、陶芸、染色、織物など12部門の計810点が並ぶ。
 作品は多彩で、彫刻部門だけ取っても素材は木や石、紙、鉄、漆喰(しっくい)、プラスチック、ポリエステル樹脂とさまざまだ。
 写真部門は、コロナ禍直後は人を被写体として撮った作品が少なかった。今回は、旅先や県内の年中行事で人々の生き生きとした表情を捉えた作品も多い。
 一般応募で選ばれた作品と熟達した会員・準会員の作品が一堂に会するのも沖展の特徴である。
 遺骨や米軍輸送機オスプレイなどをちりばめ沖縄の歴史や社会問題を表現した絵画作品。いくつもの木のブロックをこつこつ削り、四角い枠と丸い球にした彫刻の労作など、見ていて飽きない。
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 沖展の良さは、肩肘を張らない、身近さにある。
 家族や友人同士で、ああでもないこうでもないとユンタクしながら作品を見て回る楽しさがある。
 通常の展示会ではショーケース越しにしか見られない、沖展から育った人間国宝の作品をじかに見ることができるのも醍醐味(だいごみ)だ。

 遠くから全体を捉え、近づいて細部を観察するなど時間をかけて楽しみたい。
 「芸術の春」に「わたしの一点」を見つけよう。
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