アイルランドにかつて存在した「マグダレン洗濯所」と呼ばれた施設で何が行われていたのか。知っていれば知っているほど、主人公ビルの心の苦しさに深く触れることになる。
そして知らなければ知らないだけ、怖い思いをする。
 その町に住む人は皆、誰も何も言わないけれど、常に互いを見張り合い、和を乱そうとする気配に敏感で、和を守るための犠牲は見て見ぬふり。
 信心深くてつつましくて優しい母で良き隣人。そんな善良な人々が、近所の教会で起きている少女たちの不幸には心を向けない。ビルが気にかけているらしいといううわさは町に広がり、皆が一様に嫌な顔をする。そんな町にポーンと放り出されるような映画。
 マグダレン洗濯所を知らなくても、この恐ろしさは誰もが共感できる人間界の真実で、ビルの優しさもまた人間の中に芽生える感情の真実。(桜坂劇場・下地久美子)
◇桜坂劇場で上映中
【桜坂劇場・下地久美子の映画コレ見た?】『決断するとき』見て...の画像はこちら >>
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