新年度が始まった。学習環境や人間関係の変化で、子どもたちがストレスや疲れを感じやすい時期だ。
もしかしたら、身近な誰かがSOSのサインを出しているかもしれない。
 厚労省によると、2025年に自殺した小中高生は全国で538人となり、統計のある1980年以降で最多となった。最多更新は2年連続である。沖縄でも4人が亡くなった。
 大人を含む全体が約1万9188人で、初めて2万人を下回ったのとは対照的だ。それだけに、子どもたちに何が起きているのか気にかかる。小中高生の自殺は2017年ごろから増加傾向にあり、特に女性で顕著だ。
 10代の死亡原因の第1位が「自殺」なのは、G7(主要7カ国)で日本だけ。問題は深刻だ。
 自殺の原因や動機を見ると、「学校問題」が最も多く、「健康問題」「家庭問題」と続く。年代や性別によっても事情は異なり、より丁寧な分析を求めたい。
 文部科学省によると、中高生では、うつや摂食障害といった「心の病気」で学校を長期間休む生徒が増えている。

 スマートフォンの普及に伴い、SNS上でのいじめや誹謗(ひぼう)中傷、自殺を助長するような有害情報の氾濫も問題になっている。現代的な要因が自殺の急増の背景にないか注視が必要だ。
 自殺のほのめかしや、リストカットなどの自傷行為で兆候を示す子も少なくない。それを見逃してはいけない。
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 子どもの自殺防止や自殺未遂者へのケアを巡っては、これまで学校や児童相談所、医療機関、市民団体などが個別に取り組む傾向があった。
 そこで連携を深めようと自殺対策基本法が改正され、4月から全面施行された。自殺が心配される子がいれば、県や市町村は関係機関を集めて協議会を設置し、情報を集約したり個別の支援策をまとめたりできる。「点」にとどまりがちだった支援を、地域の関係機関が連携して「面」で対応することを目指す仕組みだ。
 児童虐待に対応するため各地には「要保護児童対策地域協議会」(要対協)が設置されている。今回の協議会は、その自殺対策版に近いかもしれない。2026年度は政府がモデル事業を行う自治体を数カ所選び、協議会の設置費用を補助する。
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 改正法では、子どもの自殺防止に向けた学校の責務も明記された。

 しかし、養護教諭も含め教員不足は各地で深刻になっている。精神保健に詳しいスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置も十分とは言えない。
 教員の働き方改革が求められる中で、さらに負担だけが増せば、せっかくの理想も絵に描いた餅になりかねないのではないか。
 子どもの自殺対策は急務である。新たな枠組みに実効性を持たせるため、十分な予算や人員の裏付けが欠かせない。
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