停戦に合意したというが、双方の隔たりは大きい。両国には一致に向けた努力を求めたい。

 米国とイランの交渉がきょう、仲介国パキスタンで始まる。
 トランプ米大統領が停戦合意を発表したのは8日のことだ。米国はイランへの直接的な攻撃を停止した。イランが事実上封鎖してきたホルムズ海峡では一部のタンカーが通過した。
 だが、その後も情勢は極めて流動的だ。
 合意発表後、イスラエル軍はレバノンに大規模攻撃を加え、250人以上が死亡した。イランは事実上の報復措置として、ホルムズ海峡を再び封鎖した。
 イラン側は停戦合意の対象にレバノンが含まれているとするが、米国、イスラエルは否定。トランプ氏はイランが合意を守らなければ大規模攻撃が始まると交流サイト(SNS)に投稿するなど、再び緊張が高まっている。
 米国はホルムズ海峡の完全開放を求めているが、イランは支配権の維持を主張。核開発を巡り、米国はウラン濃縮を認めない立場だが、イランは容認を求めている。
 中東にはイラン民兵組織ヒズボラなど親イラン武装勢力があり、攻撃が続けば地域での紛争拡大は必至だ。
停戦交渉に乗り出したトランプ氏には、イスラエルに攻撃をやめさせる責任がある。
 協議は困難が予想される。しかし、戦闘を終わらせる機会を逃さぬよう両国は歩み寄らねばならない。
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 この間のトランプ氏の言動は常軌を逸しているとしか言えない。
 自ら設定した期限までにホルムズ海峡開放などの進展がなければ、イラン国内の全ての発電所などのインフラを破壊すると一方的に警告した。
 さらに、猛攻撃でイランを「石器時代に戻す」と強弁し、「一つの文明全体が滅ぶだろう」と言い放った。
 発電所や浄水場など国民の生活に不可欠な施設への攻撃はジュネーブ条約で禁止されている。国際法をないがしろにするトランプ氏に与党の共和党から「重大な誤り」との批判が上がったのも当然である。
 イタリアやスペインなどはイラン攻撃を厳しく批判している。インフラを攻撃していれば国際社会での米国の権威は失墜していた。トランプ氏の発言は到底容認できない。
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 攻撃が始まった2月末以降のイラン側の死者は3千人超に上るという。
米軍もF15E戦闘機やA10攻撃機が撃墜されるなど死傷者が出ている。
 交渉が破綻し、再び攻撃の応酬が始まれば、地上戦に発展する可能性があり双方の犠牲はさらに増える。
 高市早苗首相は停戦合意後、イランのペゼシュキアン大統領と電話会談し、全船舶の航行の安全を迅速に確保するよう要求した。
 原油の9割超を中東に依存する日本にとり、同地域の安全は死活問題だ。高市氏は同時に、米国にも働きかけを強めるべきだ。
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