2024年は洋画不振が取り沙汰された年だったが、2025年に入り、洋画のヒット作が相次いでいる。その中でも異例のロングランヒットを記録しているのが、アカデミー賞脚色賞を受賞した映画『教皇選挙』だ。
3月20日の公開から6週連続で全国動員ランキングトップ10入り(興行通信社調べ)。実は、昨年4月以降の公開作品で、6週連続ランキングトップ10入りした実写洋画作品は、『ヴェノム:ザ・ラストダンス』『ウィキッド ふたりの魔女』『教皇選挙』の3作品のみ。現実の“教皇選挙には聖霊の風が吹く”と言われるそうだが、今、その風は日本の映画館にも吹いているようだ。
■公開前からの手応え――前売りの反響
本作は、キリスト教最大の教派であるカトリック教会の最高指導者にして、バチカン市国の元首でもあるローマ教皇の死去から始まる。悲しみに暮れる間もなく、ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は、新たな教皇を選出するための教皇選挙<コンクラーベ>を執り仕切ることに。
世界各国から100人を超える有力候補者たちが集い、システィーナ礼拝堂の扉の向こうで極秘の投票が始まる。票が割れるなか、舞台裏では陰謀、差別、スキャンダルが渦巻き、ローレンスの苦悩は深まっていく。そして新教皇誕生を目前に、厳戒態勢下のバチカンを揺るがす大事件が勃発──。“世界中が注目する密室”の内幕を描いた、極上のミステリー作品だ。
ヒットの兆しは、公開前の前売券の動きから見えていたという。配給会社のキノフィルムズ、劇場担当者は次のように語る。
「ムビチケ(前売券)の売れ行きが非常に良く、座席予約が可能になった公開数日前には、都内の劇場では満席が続出していました。
3月20日から全国106館での上映がスタートし、5月1日までの43日間で興行収入は6億円を突破。5月1日までの累計動員は41万4719871人、興収は6億371万7380円に達した。
さらに公開5週目には、4月21日に教皇フランシスコの訃報が報じられたことで再注目され、平均前週比率は190%超。4月24日には216%を記録し、週末はTOHOシネマズシャンテで全回(10回)が完売。都市部を中心に32劇場で74回の満席を記録し、初週の84回に迫る勢いを見せた。
■日本人にも響いたテーマと構成
作品の中心にあるのは、コンクラーベという密室の儀式。宣伝担当者はその“覗き見”感こそが興味を引いたと語る。
「荘厳な密室での駆け引きや門外不出の内幕を覗き見たいという好奇心をくすぐったのではないでしょうか。また、フランシスコ教皇の入退院の話題があったことも後押しになったと思います」
アカデミー賞脚色賞の受賞実績は品質保証として作用し、マスコミ試写の反応も非常に良好。加えて全国26劇場で合計約4000人が参加した一般試写会が、口コミ拡散の起点となった。
「圧倒的に面白い、でもSNSでその具体的な展開を話題にしにくい作品であったことが、“とにかく見てほしい”というフィジカルな口コミにつながりました。映画の内容を語るには、実際に観るしかないという感情的な飢餓感が生まれたのだと思います」
もともと中高年層狙いだった観客層が、口コミにより若年層にも拡大。
■リピーターが生まれる理由
『教皇選挙』はリピーターの多さも特徴の一つ。SNSでは「15回観た」という声も見られる。その理由を関係者は次のように分析する。
「背景美術や小道具などディテールに深みがあり、観るたびに新たな発見があります。登場人物ごとのロザリオの違いや、照明の明るさで描かれる人間関係など、繊細な演出が繰り返し鑑賞を誘っているのだと思います」
主人公がまるで探偵のように秘密をひも解いていく本作は、ジャンルとしてはミステリーに分類されるが、「ミステリー」の語源が「秘密の儀式」であることを踏まえると、言い得て妙。荘厳な衣装と一級の美術が生む世界観、息もつかせぬ謀略劇、そして驚愕のラスト──『教皇選挙』は、まさに“ポリティカル・スリラー”と“宗教ミステリー”の融合体だ。
「難解そうに見えるかもしれませんが、構成はスリリングで観客を飽きさせません。SNSでも『おじさんたちの演技がすごい』『鼻息が聞こえるほどの臨場感』という声が上がるなど、演技力と脚本の高さも評価されています」
映画の完成度、公開タイミング、口コミ──すべてがかみ合って生まれた『教皇選挙』現象。5月2日からは上映館が31館追加され、さらに25館以上の公開が控える。現実世界でも、次のローマ教皇を決める選挙、コンクラーベが5月7日から始まる。新しい教皇の選出を知らせる白い煙はいつ上がるのか、その行方が注目される中、映画『教皇選挙』もますます注目を集めそうだ。
3月20日の公開から6週連続で全国動員ランキングトップ10入り(興行通信社調べ)。実は、昨年4月以降の公開作品で、6週連続ランキングトップ10入りした実写洋画作品は、『ヴェノム:ザ・ラストダンス』『ウィキッド ふたりの魔女』『教皇選挙』の3作品のみ。現実の“教皇選挙には聖霊の風が吹く”と言われるそうだが、今、その風は日本の映画館にも吹いているようだ。
■公開前からの手応え――前売りの反響
本作は、キリスト教最大の教派であるカトリック教会の最高指導者にして、バチカン市国の元首でもあるローマ教皇の死去から始まる。悲しみに暮れる間もなく、ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は、新たな教皇を選出するための教皇選挙<コンクラーベ>を執り仕切ることに。
世界各国から100人を超える有力候補者たちが集い、システィーナ礼拝堂の扉の向こうで極秘の投票が始まる。票が割れるなか、舞台裏では陰謀、差別、スキャンダルが渦巻き、ローレンスの苦悩は深まっていく。そして新教皇誕生を目前に、厳戒態勢下のバチカンを揺るがす大事件が勃発──。“世界中が注目する密室”の内幕を描いた、極上のミステリー作品だ。
ヒットの兆しは、公開前の前売券の動きから見えていたという。配給会社のキノフィルムズ、劇場担当者は次のように語る。
「ムビチケ(前売券)の売れ行きが非常に良く、座席予約が可能になった公開数日前には、都内の劇場では満席が続出していました。
特典なしのオンライン販売にもかかわらず、作品そのものへの期待が数字に表れたと感じました」
3月20日から全国106館での上映がスタートし、5月1日までの43日間で興行収入は6億円を突破。5月1日までの累計動員は41万4719871人、興収は6億371万7380円に達した。
さらに公開5週目には、4月21日に教皇フランシスコの訃報が報じられたことで再注目され、平均前週比率は190%超。4月24日には216%を記録し、週末はTOHOシネマズシャンテで全回(10回)が完売。都市部を中心に32劇場で74回の満席を記録し、初週の84回に迫る勢いを見せた。
■日本人にも響いたテーマと構成
作品の中心にあるのは、コンクラーベという密室の儀式。宣伝担当者はその“覗き見”感こそが興味を引いたと語る。
「荘厳な密室での駆け引きや門外不出の内幕を覗き見たいという好奇心をくすぐったのではないでしょうか。また、フランシスコ教皇の入退院の話題があったことも後押しになったと思います」
アカデミー賞脚色賞の受賞実績は品質保証として作用し、マスコミ試写の反応も非常に良好。加えて全国26劇場で合計約4000人が参加した一般試写会が、口コミ拡散の起点となった。
「圧倒的に面白い、でもSNSでその具体的な展開を話題にしにくい作品であったことが、“とにかく見てほしい”というフィジカルな口コミにつながりました。映画の内容を語るには、実際に観るしかないという感情的な飢餓感が生まれたのだと思います」
もともと中高年層狙いだった観客層が、口コミにより若年層にも拡大。
渋谷や池袋といった若者エリアでも満席が相次ぎ、幅広い層にリーチすることに成功した。
■リピーターが生まれる理由
『教皇選挙』はリピーターの多さも特徴の一つ。SNSでは「15回観た」という声も見られる。その理由を関係者は次のように分析する。
「背景美術や小道具などディテールに深みがあり、観るたびに新たな発見があります。登場人物ごとのロザリオの違いや、照明の明るさで描かれる人間関係など、繊細な演出が繰り返し鑑賞を誘っているのだと思います」
主人公がまるで探偵のように秘密をひも解いていく本作は、ジャンルとしてはミステリーに分類されるが、「ミステリー」の語源が「秘密の儀式」であることを踏まえると、言い得て妙。荘厳な衣装と一級の美術が生む世界観、息もつかせぬ謀略劇、そして驚愕のラスト──『教皇選挙』は、まさに“ポリティカル・スリラー”と“宗教ミステリー”の融合体だ。
「難解そうに見えるかもしれませんが、構成はスリリングで観客を飽きさせません。SNSでも『おじさんたちの演技がすごい』『鼻息が聞こえるほどの臨場感』という声が上がるなど、演技力と脚本の高さも評価されています」
映画の完成度、公開タイミング、口コミ──すべてがかみ合って生まれた『教皇選挙』現象。5月2日からは上映館が31館追加され、さらに25館以上の公開が控える。現実世界でも、次のローマ教皇を決める選挙、コンクラーベが5月7日から始まる。新しい教皇の選出を知らせる白い煙はいつ上がるのか、その行方が注目される中、映画『教皇選挙』もますます注目を集めそうだ。
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