5月4日は「スター・ウォーズの日」。1本の映画から始まった「スター・ウォーズ」の世界を象徴する名台詞「フォースと共にあらんことを。(“May the Force be with you.”)」の、May the Force とMay the 4th(5月4日)の語呂合わせから、毎年5月4日は世界中のスター・ウォーズファンが、「スター・ウォーズ」の文化を祝い、映画を楽しむ日となっている。

 キネマ旬報YouTubeチャンネルでは、『ゴジラ-1.0』で「第96回アカデミー賞」視覚効果賞を受賞し、現在「ゴジラ」最新作を製作準備中の山崎貴監督と、動画配信サービス「Netflix」で配信中の『新幹線大爆破』が話題の樋口真嗣監督の対談「俺たちのスター・ウォーズ」(8本の動画、総尺66分)を配信中。同社から刊行されている『スター・ウォーズ』の誕生秘話を描いたコミック(バンド・デシネ)『ルーカス・ウォーズ』をもとに、熱いトークを繰り広げている。

 山崎監督は1964年生まれ、樋口監督は1965年生まれ。2人は、『スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)』(1977年、日本では78年公開)をリアルタイムで観て、大いに盛り上がった世代。特に山崎監督は『スター・ウォーズ』が映画界を目指すきっかけとなった作品として挙げている。

 実際、そのオタクぶり、愛情の深さは2人とも半端なく、番組序盤からそれぞれが知る「スター・ウォーズ」伝説やルーカス同様に自身も体験してきた制作現場の“あるある”話に花を咲かせた。

 「どんなに忙しくてもSW関連の仕事だけは受ける」と言う山崎監督に対し、公開当時、日本映画の『宇宙からのメッセージ』の方が良かったと言っていたという樋口監督。「人選を間違えた?」とすかさずツッコミを入れる山崎監督に「俺は反『SW』派じゃない!(笑)」と否定し、遠慮のない関係の良さが伝わるやり取りから対談はスタート。

 ジョージ・ルーカスがイラストレーターのライフ・マクォーリーにデザイン・コンセプトを説明する檀家ですでに宇宙船とデススターのラフが完成形に近かったエピソードに触れ、「この発想はない」(山崎)、「この時にすでに固まってる」(樋口)とその天才ぶりを称賛する。

 さらに、コンピューターによるモーション・コントロールカメラ・システムで有名なジョン・ダイクストラ、ストリートボード作成から模型制作までと何でもこなしたジョー・ジョンストン、ライトセーバーの音などを発明したベン・バートンらが同じ時代・世界に存在していたこと自体が凄いと、彼らの仕事ぶりをこれでもかと詳細に紹介。

 一方、ルーカスがロンドンでの撮影に悪戦苦闘していた3ヶ月間、たった2カットしか作っていなかった当時のILMの仲間たちのダメっぷりを、「ルーカスが帰ってくるので慌てて作った(笑)」と山崎監督はと楽しげに話し、自身も似たような経験をしたと吐露する場面も。

 この2カットは初めてできた『スター・ウォーズ』のVFXシーンとして語り草になっており、その後、ILMは撮影前に仮のCG映像を作成してイメージを共有するプリビズ(Pre-visualization)という手法を生み出すなど、VFX先駆者として多大な貢献することになる。「あらゆることを最初に自分のお金を使ってやって、それが業界の標準になっていくという、超絶先駆者」(山崎)と、尊敬の念を示す。

 全く理解を示さないスタジオ上層部、スタッフやキャストとの軋轢(あつれき)など、苦難の連続だった『スター・ウォーズ』完成までの道のり。最後の最後に残されていた制作のパートが音楽だった。『ルーカス・ウォーズ』の中でも、作曲家ジョン・ウィリアムズと出会い、曲が出来上がった時のエピソードは印象深いと言う2人。そんな2人にとって、音楽パートの収録は「収穫祭のような幸せな時間」(山崎)に対して、「まだ何かできるんじゃないか」(樋口)と対照的。監督の志向の違いが明確に分かれるところも興味深い。

 『ルーカス・ウォーズ』の最大の醍醐味は、あらゆる困難からの大逆転劇。完成してもなおスタジオ上層部に見せた試写会では酷評されるが、公開されるや否や歴史的大ヒットに。「痛快でしかない」という山崎監督だが、大成功した後にルーカスを抑える立ち位置にいたゲイリー・カーツが彼から離れたことに触れ、「自分と真逆の人間を置いておかなくちゃダメ」と語り、「他山の石、我々も気を付けましょう」と樋口監督も同調した。

 「スター・ウォーズファンなら絶対に持っておきたい本」(山崎)、「末代まで」(樋口)と両監督が激押しする一冊『ルーカス・ウォーズ』。2人は同書の映画化を熱望していた。

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