ゴールデンウィークの真っ只中、5月2日に公開された『サンダーボルツ*』。公開3日間で観客動員数27万821人、興行収入は4億5877万1400円を記録。アベンジャーズ新時代の幕開けを飾る話題作として、好スタートを切った。

 本作は、かつてアベンジャーズに敵対していた“ならず者”たちが集結し、「サンダーボルツ」という新たなチームを結成。世界の危機に立ち向かう姿を描く。その中で、チームのまとめ役として戦う、ウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズ。その日本版声優を10年以上担当している白石充に、バッキーへの想いや『サンダーボルツ*』の見どころについて話を聞いた。

――バッキー役の吹替をするとき、どんな気持ちですか?

【白石】正直、毎回「うわっ、また会えた!」っていう感じなんです。バッキーが登場するという噂が聞こえてきても、すぐにオファーが来るわけではないので、「本当にまた会えるのかな」とドキドキします。だから、いざ正式に連絡があると、本当にうれしいんです。分量が多かろうが少なかろうが、再会できること自体が幸せですね。

――『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』で、スティーブ・ロジャースの親友として初登場しました。当時を振り返っていかがですか?

【白石】本当に“気のいい兄ちゃん”っていう印象でした。その分、「キャップにとっての良い友達ってどう演じるべきだろう?」と悩みましたね。今思うと、当時の自分はまだ未熟で、何度も録り直した記憶があります。

――その後、『ウィンター・ソルジャー』で再登場。ヒドラによって洗脳され、暗殺者になっていました。

【白石】一作目では死んだような描写だったので、僕も「いい経験をさせてもらったな」くらいに思っていたんです。でも数年後、「バッキーが出る」と聞いてびっくりしました。しかもまったく別人のような暗殺者としての登場だったので、もう緊張で口がカッサカサになるくらいでした(笑)。記憶を失った暗殺者のバッキーを、どう表現するのか。せりふも多くはないので、その中でどう彼の苦悩を伝えるか、本当に悩みました。

──セバスチャン・スタンの演技を見てどう思いましたか?

【白石】すごいですよね。あれだけ役に徹して、表情から何から別人のようになれるのって、やっぱりプロだなって。だからこそ、「この演技に日本語をどう乗せるか」と悩みました。そこがまたプレッシャーになるんですけどね(笑)。

――『ブレイブ・ニュー・ワールド』でのバッキーの一言、印象的でした。

【白石】あれは短いシーンでしたけど、本当に良かったですよね。サムがキャプテン・アメリカという重責を背負う中で、バッキーは唯一、忌憚なく言葉をかけられる存在。だからこそ、あの一言がグッとくるんですよ。

――『サンダーボルツ*』の見どころは?

【白石】愛すべきチームだと思います。みんなバラバラで、過去にいろいろあるキャラたちばかり。でもそれが一つの危機に直面して団結する――その瞬間がすごくワクワクします。序盤のバラバラな感じも面白くて、みんな勝手なことを言い合ってるあの空気も魅力ですね。

 その中でバッキーって、年齢的にも100歳オーバーの“最年長”。苦い過去もあるし、まさに“先輩”なんですよね。でも、いわゆるリーダータイプではない。背中で語るというか、皆が前を向くためのきっかけを与える存在なんです。それと、今作のバイクシーンがめちゃくちゃかっこいいですよね。でも、せりふなし(笑)。僕は銃を奪い取る時に力む息を入れたくらいでしたけど、今までで一番かっこいいバッキーでした(笑)。

――これからバッキーはどうなってほしいですか?

【白石】洗脳や過去の過ちに縛られ、ずっと下を向いていた彼が、ようやく前を向くようになってきた。そして今では、本来持っていた“親友のためなら過酷な戦いにも身を投じる”熱い男の姿を取り戻したように感じます。だからこそ、誰かが傷ついているときに、そっと寄り添える存在になれる。派手に先頭に立つタイプではないけれど、いざ振り返ったとき、そこにバッキーがいる──そんな存在であってくれたら、と思っています。

――『サンダーボルツ*』はMCU初心者にもおすすめできますか?

【白石】はい、他のMCU作品を観ていなくても楽しめる構成になっています。過去に囚われた者たちが、自分と向き合い、そして目の前の困難と向き合う。その姿は、ヒーロー映画という枠を超えて共感できる人間ドラマになっていると思います。何か特別な能力があるわけではないサンダーボルツ*だからこそ、リアルで魅力的なんです。たとえMCUの知識がなくても、十分楽しめる作品です。

――『サンダーボルツ*』は全国劇場にて公開中。バッキーが見せる新たな一面を、ぜひ劇場で確かめてください!

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