俳優・綾野剛が主演を務める映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男~』(6月27日公開)より、キャストのコメントや本編、メイキング映像で本作の見どころを紹介する特別映像「感動編」「共演編」の2本が公開された。

 本作は、20年前に日本で初めて「教師による児童へのいじめ」が認定された体罰事件を題材にした、福田ますみによる衝撃のルポルタージュ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫)を三池崇史監督が映画化したもの。

 「感動編」では、薮下誠一役の綾野、氷室律子役の柴咲コウ、週刊春報の記者・鳴海三千彦役の亀梨和也が、それぞれのキャラクターと作品への想いを語っている。

 映像内では、朝の薮下家の一幕が印象的に描かれる。顔面蒼白の薮下が震える手で週刊誌を持ち、自身の名前とモザイク入りの顔写真が掲載された記事を見つめる。テレビからは「悪魔のような教師」と読み上げる声が流れ、玄関前には報道陣が殺到している――そんなシーンで世間に追い詰められる薮下を演じた綾野は、「彼(薮下)があらゆることに巻き込まれていくが、“巻き込まれている”という見方だけが正しいのかといわれると、それも違う気がする」と、多くの登場人物と関わった立場ならではの視点で語る。また、豪華キャストとの共演については「芝居合戦というよりはノーガードの撃ち合いのようだった」と表現している。

 柴咲も、「お芝居をする側としてのワクワク感」「『綾野さんとバチバチできるのかな?』みたいな」高揚感があったと振り返る。また、役作りとして「確固たる強さ」を体現するため、瞬きを控えるなど視覚的にも工夫を凝らしたという。

 一方、記者としての正義と使命感を胸に事件を追う鳴海役の亀梨は、「人間の複雑さや、一つの答えにたどり着かないもどかしさがこの映画の魅力」と語り、役作りでは表現の強弱に細心の注意を払ったと明かした。

 綾野は最後に、「あらゆることはそんなに単純じゃなくて、角度によって全部違う」と述べ、三池監督の手によるエンタメ性の中で、薮下という人物を生き切った実感をにじませた。

 一方、「共演編」では、共演者同士の印象について語られている。綾野が「とてつもない緊張と高揚が連鎖した」と振り返るのは、家庭訪問の回想シーン。片手にタオルを持ち、靴下のまま部屋に入ってくる薮下の姿。濡れた前髪の奥から覗く目に狂気が宿る。このシーンについて綾野は、「柴咲さんから出ていた律子のムードを受け取り、あの薮下が生まれた」と述べ、柴咲の存在が演技の鍵だったことを強調。柴咲も綾野の一つ一つの仕草を挙げながら「薮下先生の振る舞い方を作るのが本当に上手だった」と絶賛する。

 さらに、カラスの鳴き声が不気味に響く薮下家の玄関前のシーンには、14年ぶりの共演となった綾野と亀梨の姿が。亀梨は、「役として綾野さんに本気でぶつかれるかが勝負だった」と話し、綾野の現場での姿勢に「真似したくてもできない」と感銘を受けたという。綾野もまた、「亀梨さんに引き出され、これまでにない声や力が湧き出た」と述べ、互いに刺激を受け合った現場だったことがうかがえる。

 綾野はまた、三池監督について「俳優が何をするかを受け止めてくださる」と称し、綾野が複数の演技パターンを提案した上で、監督が選択する形で撮影が進められたという裏話も披露している。

 さらに、「全体の空気が凍る」「怖かった」「ヤバすぎる」と、綾野・亀梨・三池の男性陣3人が口を揃えて話した、柴咲のこん身の“怪演”にも注目だ。

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