米ラジオ局「NPR」による人気企画の日本版として昨年スタートした同番組は、NHKのオフィスの一角で収録が行われる音楽番組。
そんな中、“演歌の女王”石川さゆりが番組に登場。“職場で演歌を歌う”という前代未聞のシチュエーションに挑む、特別なステージとなった。
200人のスタッフを前に登場した石川は、深々と一礼して代表曲「津軽海峡・冬景色」を披露。今回のバンドはドラムレスの編成で、アコースティックギター、バイオリン、チェロ、ピアノというシンプルな構成。冒頭から一音一音に余白のあるアレンジでじっくりと聴かせ、“歌で空気を変える”ような圧倒的な存在感を見せた。しゃくりや所作に宿る“演歌らしさ”も存分に発揮された。
歌い終えた石川は、「すごくワクワクしますね。顔がこんなにはっきり見えるし、職場で歌うのは初めて」と笑顔を見せ、「歌は生活の中にあるもの。ステージで歌うのも楽しいけれど、職場というみなさんの日常の場で歌って、元気をお届けできたらうれしい」と語った。
2曲目に披露されたのは「朝日楼(朝日のあたる家)」。アカペラで始まり、ギターのアルペジオやチェロのピチカートが重なっていく。
続く「飢餓海峡」はギターとチェロだけのミニマルな編成。鬼気迫る表情で声を絞り出すように歌う姿は、まるで舞台を観ているかのような迫力を放っていた。石川は「楽しい歌もいいけれど、いろんな人がいたということを伝えたかった」と思いを明かした。
中盤では、注目のピアノトリオバンド・fox capture planと共演し、「ずいずいずっころばし」を披露。「友達になってもらえますか?」とユーモアを交えながらバンドを招き入れ、アシッドジャズ風のアレンジに身を委ねた。演歌とクールなジャズサウンドが融合した独自のアレンジで、『tiny desk』らしい空間を生み出した。
その後のfox capture planによるインストゥルメンタル演奏では、石川は盛り上げ役にまわり、チャーミングな姿も見せた。そしてラストは「ウイスキーが、お好きでしょ」。ジャジーなシャッフルリズムの中、石川のしゃくりが艶やかに響き、こちらもまた本家『tiny desk』さながらのクールな世界を描き出した。
ライブ後、石川は「何年やっても新しいことがある。
歌手活動53年を迎える石川だが、「声がガサガサになってしまったとしても、その声が面白いと思えるタイプ。“こうでなければ”というものはないし、その瞬間の空気感を歌うようにしている」と語り、「もっと素直に、正直に歌いたい。演歌だから、ポップスだからという垣根はなく、いいものはいいし、ダサいものはダサい」と、ジャンルを越えた音楽への思いを言葉にした。
■放送予定
6月2日(月) 前0:25~前0:54(※日曜深夜) <NHK総合>