■ツアーに向けた「ビートのある曲」を多数収録 久しぶりのタッグも
――アルバム『LOVE NEVER DIES』の制作はいかがでしたか?
ツアー中もレコーディングしていたんですけど、すごく楽しかったです。今年でデビュー27周年を迎えましたが、今回、作曲はデビュー曲の「つつみ込むように…」を書いてもらった島野聡さん、「Everything」の松本俊明さん、「INTO THE LIGHT」の松井寛さん、「オルフェンズの涙」の鷺巣詩郎さんといった20年以上お付き合いのある作家さんから、初めての方まで幅広くお願いしました。
――アルバムに向けて作られた新曲は明るいものが多いですね。
アリーナツアー『THE TOUR OF MISIA』(MISIAのツアーシリーズ)を久しぶりにやろうと決まったとき、だったらこんな歌も歌いたい、あんな歌も歌いたい…とイメージが膨らみました。『THE TOUR OF MISIA』はエンターテイメント性の高いツアーシリーズなので、バラードも良いですがやはり「ビートのある曲もやりたいね」となりました。作曲・アレンジが鷺巣さんの「フルール・ドゥ・ラ・パシオン」、ロサンゼルスにいるICHIくん(Ichiro Suezawa)が作曲・アレンジをしてくれた「CHANGE MY WORLD」、島野さん作曲・アレンジの「Be KIND」、作曲は松本さん、アレンジは松井さんの「LOVE NEVER DIES」、作曲・アレンジが松井さんの「明日晴れるといいな」、アルバム制作の後期に作ったものは全曲ビートものなので、制作時から『THE TOUR OF MISIA』で歌っているイメージがありました。
――「Be KIND」は久しぶりに島野さんの曲ですね。
アレンジも島野さんにお願いしました。メロディーから1990年代のR&Bみたいなちょっと優しい雰囲気を感じるものがいいっていうオーダーをして。1990年代のR&Bって、ベースとドラムが打ち込みでタイトなリズムのものが多いですよね。島野さんのデモは制作途中で生楽器になっていたりしたので、「ごめんなさい」と言って元の打ち込みに戻してもらいました。
――音源を発表する前にツアーで歌ってましたね。
すごく反応が良かったです。ファンの方々は「つつみ込むように…」の島野さんの曲だと知らないのに、「MISIAっぽい曲で懐かしい」と感じる方が多いみたいです。
■矢野顕子さんがピアノを弾いていらしたデモ音源が忘れられなくて
――「希望のうた(feat. 矢野顕子)」をレコーディングし直したのはきっかけがあったんですか?
矢野顕子さんに2022年に曲を提供いただき、その年にレコーディングも終え完成していたのですが、最初に聴いた矢野さんがピアノを弾いていらしたデモ音源がずっと忘れられなくて、いつか矢野さんとご一緒させていただきたいと思っていました。そして昨年末、紅白歌合戦で矢野さんのピアノで一緒に歌わせていただいて、改めて「これは作品として残したい」という話になりました。もっと早く気付けば矢野さんが去年の12月に日本にいたときにレコーディングできたんですけど…。
――確かにそうですね!
アレンジは意図的に変えるというより、演奏者が変わるのでそのほかも変えたくなるかもしれないと矢野さんと話していました。矢野さんがレコーディングされたピアノとコーラスの音源を聴いて、「ああ、やっぱり、ピアノに合わせてリズム隊は録り直したい」と思いました。であれば矢野さんの『さとがえるコンサート』で演奏されているベースの小原礼さん、ギターの佐橋佳幸さん、ドラムの林立夫さんにやってもらうのがいいなということになりました。もちろん、私も歌を歌い直しました。
――松井さん作曲の「明日晴れるといいな」はどうでしたか?
ライブ本編の最後にトロッコでアリーナの外周を回るときに歌う曲として、歌詞を書きました。ライブの後はヘトヘトになったりするんですが、みんなで楽しめたライブは、ヘトヘトになってもなんだか明日はいい日になるだろうなって思う気持ちになるんです。ライブでお客さんが盛り上がっているところを想像して歌詞を書いたり、さらに盛り上がるように曲構成を作っていったので楽しかったですね。「明日晴れるといいな」はもし間に合わなかったら次のアルバムに入れようと話していたのに、結局2週間で作り上げました(笑)。
――タイトル曲「LOVE NEVER DIES」は?
松本さんの作る切ないメロディーと、松井さんの紡ぐ4つ打ちハウスアレンジがグッとくるナンバーです。佐橋さんの演奏した12弦ギターもすごくピッタリで、全体を通して聴くと、どことなく奥の方に昭和な雰囲気というのでしょうか?シティポップな香りも感じる、絶妙なバランスだなと思っています。
アルバムとツアータイトルは同じですが、実はツアータイトルの方が先に決まったんです。この「LOVE NEVER DIES」という言葉が好きで、このタイトルの歌を歌いたいと思っていたら、ちょうどデモ曲をいただきまして。サビを「LOVE NEVER DIES♪」って歌ってみたらピッタリで、これは歌う運命なんだわ!と歌詞を書き上げました。シェイクスピアの「お気に召すまま(As You Like It)」に影響を受けながら。作品の名台詞で「この世は舞台だ。人は皆、その舞台の役者である。」というものがあります、そこから一人の人間も、人生という舞台で7つの役(幼児から大人に変わっていく)を演じている…とか、いろんな話が続いていくんですけど、確かにそうだなと。
――最後にこのアルバムを聴くみなさんにメッセージをお願いします。
ラブソングっていろいろなことに通ずる歌だと感じます。たとえ恋愛の歌だったとしても、人を愛するということはもちろん、友人や家族、大切な人を思った歌に聞こえることもあるし、平和の歌に聞こえることもある。いろいろな歌があるけれど、ラブソングは人の心に、その人の心に寄り添う形で残っていく。愛はたぶん、私たちの根本的な何かだから。私自身ラブソングを27年間ずっと歌ってきました。「つつみ込むように…」を歌ったり「Everything」を歌ったり。ラブソングは終わらない、消えない、愛されていく。『LOVE NEVER DIES』というタイトルにはそういう裏テーマのようなものも込められています。ぜひみなさんの終わらない想いに寄り添えるアルバムになっていったらいいなと思っています。
(聞き手:平山雄一)
■MISIAプロフィール
1998年にR&Bナンバー「つつみ込むように…」でデビュー。