6月23日は、太平洋戦争末期に地上戦が繰り広げられた沖縄の戦没者を追悼し、平和を祈る大切な日、「慰霊の日」。この日に合わせて、沖縄を舞台にした映画『木の上の軍隊』が沖縄以外で初めて上映された。
会場となった東京・新宿ピカデリーでは、主演の堤真一と山田裕貴、そして平一紘監督が登壇し、それぞれ作品への想いを語った。

 本作は、1945年の沖縄県・伊江島を舞台に、2人の日本兵がガジュマルの木の上で身を潜め、終戦を知らぬまま約2年間生き延びたという実話をもとに、作家・井上ひさし氏原案の舞台作品を映画化したもの。堤は厳格な少尉を、山田さんは沖縄出身の新兵を演じた。撮影は全編沖縄ロケで行われ、伊江島の実在するガジュマルの木での撮影も敢行された。

 6月13日より沖縄で先行公開され、大ヒットスタート。監督は「怪しいくらい劇場を回っていますが、小さなお子さんから中高生、ご高齢の方まで幅広い世代に観ていただいています」と現地で目撃した反響を語った。

 堤は「沖縄での反響もうれしいですが、全国にもこの映画が広がってほしい」とコメント。山田も「監督から、沖縄の劇場に行列ができていたと聞いて感激しました。戦争を題材にした映画でも、こうして多くの人が目を向けてくれることが本当にうれしい」と目頭を熱くした。

 実話をもとにした本作は、沖縄出身の平監督にとっても特別な作品。「企画を受けたのは33歳のときでしたが、それまで沖縄戦と向き合ってこなかった自分が恥ずかしかった」と振り返りながらも、「2人の人間ドラマとしてエンタメ性もある作品にできると感じた」と話した。

 堤は「伊江島のことも知らなかったし、具体的な知識もなかった。
でも脚本が素晴らしく、やりたいと思ったし、やらせていただいて本当によかった」とオファーを受けた当時を振り返った。山田は「戦争映画というより、『生きること』の大切さを感じられる映画。家がある、食べられる、水が飲める──それがどれほどありがたいことかを伝えられる作品だと思う」とアピールした。

 撮影の1年前に3本のガジュマルの木を植樹し、木の上の空間を再現。堤は「60歳で木に登って、そこから見る景色ってすてきなんですよ」と笑顔で語り、山田も「人間って順応していくもの。最初は大変だったけど、数日経つとするする登れるようになっていて、座り心地がいい場所を自然に見つけていた。実話の2人もそういう感じだったのかなって思った」としみじみとした表情を見せた。

 また、平監督は撮影の準備中に戦時中の遺骨が発見されたことも明かし、「この映画には嘘がない。まさに戦争の現場で撮っていたんだと実感した」と語っていた。

 最後に、山田は「この仕事をしている意味は、歴史や大切なことを伝えることだと思いました。この映画には年齢制限もないので、ぜひ子どもたちにも観てほしい。生きる力を多くの人に届けられたら」と語ると、堤も「僕には小学生の娘が二人いますが、普段は自分の出演作を見せることはない。
でも、この映画だけは見せたいと思いました。ぜひ、皆さんもお子さんと一緒に映画館に足を運んでください」と呼びかけ、舞台あいさつを締めくくった。
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