俳優の吉沢亮、李相日監督が23日、都内で行われた映画『国宝』の大ヒット御礼舞台あいさつに登壇した。

 本作は、黒衣として3年間歌舞伎の世界に身を置き、その体験をもとに執筆した吉田修一氏による小説を、李相日監督の手により映画化したもの。
任侠の一門に生まれながら、歌舞伎役者の家に引き取られた主人公・喜久雄(吉沢)が、芸の道に人生を捧げ、やがて“国宝”と称される存在になるまでの50年を描く、壮大な一代記。

 予告でも使用されている屋上の舞のシーン。吉沢演じる喜久雄と、森七菜演じる彰子の悲しく美しい映像が映し出されている。アドリブだったそうで、吉沢は「ちょっとした台本みたいものはあったんですけど、ほぼ関係なくなり。頭からケツまでのワンカメラの長回しを3テイク撮って。使われたのは3個目のテイクなんですけど、テイクごとに監督が僕の方に寄ってきて、一言だけ言うんですよ。3テイク目は『とりあえず森七菜ちゃんの顔を見てて』と言われて『わかりました』と言って。見てたら、あんまり言えないけど…」と吉沢が振り返ると、後を受けた李監督が「今までにないせりふを言った、と」と明かした。

 踊りに関しては、舞踊家の谷口裕和氏と相談してイメージはあったが「現場に入ったら関係なくなり、その場でした」という。李監督は「谷口さんと『ベースのものは決めておこう。そこから後は感情入ってどうなるかわからないけど』と。本来は夜のシーンだったんです。
夜暮れてから照明を当てて撮る予定で、6時ぐらいから6時間か夜中ちょっと過ぎるぐらいまで撮る設計だったんですけど、当日現場に行って僕がお昼に天気見た時に今日行けるなと思って、スカイラインでやりましょうと言っちゃったんですね」と夕暮れになる瞬間に撮影することになったそう。「その時間を狙おうとなって、撮影時間が正味長くて30分なんです。その間で、どうするかっていうことで、逆算して早めに来てもらってリハーサルを現場でやったんです。普段撮影する時は、なるべくスタッフを少人数でリハーサルやって、撮影する時にみんな集まるようにしてるんですけど、そのシーンだけはなるべく来れる人みんな来てもらった。30人、40人ぐらい集まってもらって、2人のリハーサルをみんなに見てもらって、みんなに意見を言ってもらったんです。上は70代から下は20代の子たちも含めて。ちゃんといい意見が出るんです。『喜久雄の狂気がもうちょっと足りないと思います』とか。結構ポイントをついた感想を彼は浴びた」と説明した。

 時間もギリギリの中で賭けに近い3回目で、渾身のカットが撮影できたという。「アドリブというか、彼が森さんの言葉とか彼女の芝居に反応して、ああなっていった。ああ受け取って、ああいう風に答え、これは見事だったなと思いました」と李監督は吉沢を称えていた。


 きのう6月22日までの公開17日間で観客動員152万人、興行収入21.4億円と突破する大ヒットとなっている。1週目から2週目に143%を記録。最新のシネコンランキング(6月20日~6月22日の3日間集計、興行通信社調べ)で公開3週目にして1位を獲得した。週を追うごとに前週を上回る成績をあげている。
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