『日本アカデミー賞最優秀作品賞』を受賞した映画『侍タイムスリッパー』(2024年公開)が、7月18日に日本テレビ系「金曜ロードショー枠」(後9:00~後11:29※放送枠35分拡大)で地上波初放送されることが27日、発表された。

 今作は、制作費は通常の邦画の10分の1以下。
スタッフもわずかな人数だった。目を覆いたくなるような逆境の中で制作されながらも、出演者の持ち出しも厭わぬ努力と、監督のねばり、東映京都撮影所の全面的支援でようやく公開にこぎつけた今作だったが、上映されたのは、当初1館だけ。今作を見た観客からの評判が評判を呼び、上映館はみるみる増え続け、全国で380館の映画館で上映されまでの規模にふくれ上がり、興行輸入も10億円を超える大ヒットを記録。『第48回日本アカデミー賞』では、インディーズ映画初の最優秀作品賞の受賞に輝く快挙を成し遂げた。

 幕末の侍が雷に打たれ、現代の時代劇撮影所にタイムスリップ。突然、自らに降りかかった理解不能な状況に戸惑いながらも、時代劇の“斬られ役”として第2の人生に奮闘する姿を描く時代劇コメディー作品。人間ドラマでもあり、手に汗握るチャンバラ活劇でもある。

 主人公の会津藩士・高坂新左衛門は、ハリウッド映画『ラストサムライ』にも出演した“伝説の斬られ役”、故・福本清三氏からイメージを得て、取り巻く人情あふれる登場人物たちや本格的な殺陣シーンと、時代劇への愛が存分に込められている。

 監督は、ビデオ撮影業のかたわら農業を営む安田淳一氏。映画の製作、配給を事業とする「未来映画社」を設立し、47歳の時撮影した自主映画『拳銃と目玉焼』(2014年)で、長編映画デビューを果たしたという遅咲きの映画監督。自主制作ゆえに監督がみずから制作資金の調達に奔走するも、「自主制作映画で時代劇を撮る」と言う無謀さと、撮影当時はコロナ禍の真最中という時期もあり資金集めが難航。諦めかけた監督に「脚本がオモロいから、なんとかしてやりたい」と救いの手を差し伸べたのが、“時代劇の聖地”東映京都撮影所(通称:太秦撮影所)だった。


 制作期間半年にも及んだ末になんとか映画は完成したが、その時の監督の銀行口座に残っていたのは、わずか7000円。「地獄を見た」と語る監督は、映画が当たらなければ、農業も続けられないと崖っぷちに追い込まれていたという。

 主人公の会津藩士・高坂新左衛門を演じるのは、1998年に日中合作映画『戦場に咲く花』でデビュー以来、数多くのドラマや映画に出演しながらも、今回初めて主演を務める山口馬木也。今作で『第67回ブルーリボン賞』の主演男優賞、『第48回日本アカデミー賞』でも優秀主演男優賞を獲得した。

 高坂の敵役・風見恭一郎を演じるのは、1982年に『OH!タカラヅカ』で映画デビューして以降、現代劇・時代劇ともに数多くの映画、ドラマで活躍する冨家ノリマサ。一歩間違えは漫画チックになりがちな難しい役どころを、持ち前の品位と華やかさで鮮やかに演じて見せる。

 ヒロインの助監督・優子を演じるのは、安田監督の『拳銃と目玉焼』(2014年)でデビューしていこう。安田監督作品には欠かせない俳優・沙倉ゆうの。劇中の役柄だけでなく、予算もスタッフも足りない今作では、実際に撮影現場での助監督の役目もこなしておりスタッフ兼役者としての参加となっている。

 当初“伝説の斬られ役”故・福本清三氏が務める役だった殺陣師・関本には、かつて福本と同じ「東映剣会」に所属し、1964年にデビュー以来60年ものキャリアを誇る重鎮・峰蘭太郎。「書道のような美しく鮮やかな殺陣」と称される“斬られ役”の確かな技術と、俳優としての演技力で、見事に福本の代わりを務め上げている。
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