舞台『東京リベンジャーズ -The LAST LEAP-』のプレビュー公演が26日、COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで上演された。当初は通常公演として開幕の予定だったが、21日に運送会社による輸送時の火災事故が発生し、衣装やウィッグを含むメイク一式が全焼、舞台美術の一部が焼失する事態となり、急遽復旧作業や代替の準備が行われていたが、無事に開幕となった。


 「絶ッ対ェ(ぜってぇ)諦めねぇ!」。恋人や仲間を救うためタイムリープを繰り返し、逆境に負けず何度も立ち上がる主人公・花垣武道の言葉を地で行くように、異例のトラブルに屈することなく、キャスト・スタッフが一丸となって総力を結集。大勢の観客が見守るなか無事開幕した舞台は、“リベステ”(舞台『東京リベンジャーズ』の略称)の底力を見せつけるものとなった。

 物語は2024年に上演された第4弾“天竺編”の結末とリンクし、一気にその後が描かれていく。東京卍會(東卍)の総長・佐野万次郎/マイキー(松田凌)不在のまま、横浜を拠点とする天竺との抗争に挑もうとする花垣武道/タケミチ(木津つばさ)。果たして東京卍會の危機を救い、最悪の未来は変えられるのか――。オープニングから激しいアクションや疾走感溢れる音楽とともに舞台が展開し、一瞬の表情にも個性が表れるそれぞれのキャラクターを、ヴィジュアルの細部までしっかり具現化。困難を乗り越えてのプレビューとは思えないクオリティと熱量に、大きな拍手が沸き起こった。

 演出家の伊勢直弘が開幕直前のコメントで触れた通り、演出プランの変更もあったというが、全くそれを感じさせず、可動式のセットを活かした場面転換、メインキャストやアンサンブルの全身を使いきる妥協ないアクション、回想を効果的に挟みながら各キャラクターのバックボーンまで丁寧に見せる展開で、揺るぎない世界観に没入できる。

 第1弾からタケミチを演じ、役と完全同化している木津つばさのまっすぐな笑顔、したたる汗をものともしない熱量と温かい人間性。“未来”が自分の手にかかっているというタケミチの責任感や使命感が、声の張りや足蹴りひとつにまで感じられる熱演に、心が大いに揺さぶられた。また、立ち姿や鋭く深い目力からもマイキーのカリスマ性を放つ松田凌。
今作では特にマイキーの台詞一つひとつに重みがあり、これからの時代に思いを馳せたくなる場面も。ふたりの安定感と心を通わせる芝居に、客席で最終章ならではの寂しさを感じる人も多いのではないだろうか。

 一方、東卍を追い詰める天竺の総長・黒川イザナを演じる北村諒は、孤独を抱えるゆえの冷酷さと複雑な人間性を巧みに表現。ミュージカル『東京リベンジャーズ』では佐野万次郎を演じる北村にとって、昨年に続き大きな挑戦となったイザナ役の集大成に相応しい演技を見せている。非情な稀咲鉄太(結城伽寿也)の執着、タケミチの相棒・松野千冬(植田圭輔)の忠誠心、天竺の四天王・鶴蝶(岩城直弥)の葛藤と情、タケミチの人生唯一の恋人・橘日向(根本流風)の秘めた本心など、抗争の中で絡み合うさまざまな思いが、終盤に向けてドラマティックに熱を帯びていく。人と人がぶつかり合い、投げ倒されるたびに響くドンドンという振動、仲間を想う叫びと涙。全編魂のこもった舞台で惹きつけ、今ある何気ない日常は、いくつもの困難や挫折を繰り返すなかで得た尊いものだということを、タケミチたちの生き様が教えてくれる。

 感動的なエンディングの後、鳴りやまない拍手とスタンディングオベーション。カーテンコールで木津つばさは、開口一番「幕開けましたね」と感慨深い様子。「スタッフさん、制作の方、関係者の皆さん、色々な方々がいてくださって、僕らは今、板の上に立てています。本当にありがとうございます」と思いの丈を伝える。開幕直前の事態を知ったときは公演中止も頭をよぎり、「涙さえ出ないぐらい悔しくて……」と、唇をかみしめていたという。
観客にあらためて「勇気を出して劇場に来てくれてありがとう」と感謝を述べ、「大阪公演、横浜公演、全身全霊で駆け抜け、突っ走っていきますので、最後の最後まで応援していただけるとうれしいです」と意気込む。最後に「皆さまのヒーローたちが頑張るので、その目で見届けてくれたら。ありがとうございます!」と木津が締めくくり、特攻服に身を包んだほかのキャストたちも安堵の表情を浮かべ、観客の熱い熱い拍手に応えていた。

 舞台『東京リベンジャーズ-The LAST LEAP-』は6月29日までCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホール、7月3日~10日までKAAT神奈川芸術劇場 ホールで上演。(取材・文/小野寺亜紀)
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