■完全に収束したわけではないが…、多くのクリニックではPCR検査の実施なし
一時期、猛威をふるった新型コロナウイルス感染症。2023年から一般的な感染症と同様に5類感染症と位置づけられたが、終息したわけではまったくない。症状は、頭痛、喉の痛み、食欲不振、嗅覚障害、疲労感、胸部不快感、胃腸炎、重度の下痢など、風邪に似た症状が特徴。東京都保健医療局の報告によれば、2025年7月時点、東京都内では「NB.1.8.1株」や「XFG株」が主流株となり、感染者数も増加傾向だという。
――現在、クリニックにいらっしゃっている患者さんで新型コロナウイルスの感染者はやはり増加傾向にありますか?
「はい。6月中旬ころから、少しずつ増えてきています」
――新型コロナウイルスは、株によって症状や重症度、感染力が違うと言われますが、今年はどんな特徴があるのでしょう。
「私見なのですが、基本的に若い人にとっては、もうほとんど風邪と変わらないように思います。熱と喉の痛み、咳や倦怠感が主な症状ですが、今年に限った特徴的な症状があるわけではなく、感染力も特別に強いわけでもありません。すでに多くのクリニックではPCR検査も実施しておらず、主に抗原検査で診断しています」
――PCR検査をするほどでもないぐらい、重症化率は下がっているのでしょうか。
「そうですね、いわゆる上気道感染の一つと捉えられるくらいになりました。
――すでに、インフルエンザのようなものになったと考えていいですか?
「そう考えて問題はないと思います」
――コロナのほか、この夏に流行りそうな感染症を教えてください。
「それこそインフルエンザです。季節外れのように見えますが、この夏もちょくちょく患者さんがいらっしゃいます。あとはヘルパンギーナや百日せき、マイコプラズマ肺炎も見られます。お子さんでは、溶連菌感染症、目に症状が出るアデノウイルス感染症も感染力が高いので注意が必要です」
――昨今はマスクをする人も減り、コロナをはじめ様々な感染症にかかりやすくなっているのではないかと思います。医師の立場からアドバイスはありますか?
「手洗いやマスク、うがいなどの習慣が少しずつ忘れられてきているので、これは続けた方がいいと思います。外出時にアルコール消毒シートなどを持ち歩いておくことも有効だと思います。あとは何よりも、体調が悪い時は、人混みや外食を避けてもらうことが大事ですね。コロナ禍のように過剰に気にしすぎる必要はないと思いますが、感染症にかからないにこしたことはないので留意しておきましょう」
<監修者>
吉川裕章
近畿大学医学部卒業後に京都大学医学部附属病院および関連病院にて臨床研修。大阪医科大学(現大阪医科薬科大学)皮膚科に入局し、関連病院にて勤務。