梶浦のピアノとともにステージを支えたのは、是永巧一(ギター)、佐藤強一(ドラムス)、高橋“Jr.”知治(ベース ※高=はしごだか)、今野均(バイオリン)、赤木りえ(フルート)、中島オバヲ(パーカッション)、大平佳男(マニピュレーター)というFRONT BAND MEMBERS(FBM)。ボーカルにはKAORI、YURIKO KAIDA、Joelle、LINO LEIAが加わり、さらにゲストとしてASCA、JUNNA、鈴木瑛美子(EMIKO)が出演。ファイナルにふさわしい布陣となった。
場内が暗転すると、開幕を告げる音楽が鳴り響き、EMIKOの第一声がそれを切り裂いた。披露されたのは、EMIKOの『Yuki Kajiura LIVE』初参加を記念して梶浦が書き下ろした「black rose」。ステージ上段でスポットライトを浴びながら力強く歌声を響かせ、FBMが生み出すグルーヴに体を揺らす姿は初登場とは思えないほど堂々としていた。続けて「eternal blue」では低音を支え、FictionJunction YUUKAの1stアルバム収録曲「destination」をカバー。KAORIとYURIKO KAIDAによる鉄壁のハーモニーに支えられ、オリジナルシンガーとは異なる角度から楽曲の魅力を引き出した。
「八月のオルガン」では、レギュラー歌姫の最年少LINO LEIAが本領を発揮。繊細かつエモーショナルな歌声で華やかな輝きを放ち、初出演したvol.#17(2022年)からの大きな成長を印象付けた。
中盤にはASCAが登場し、「記憶の森」「君が見た夢の物語」を披露。
JUNNAは「aikoi」を力強く表現し、アニメ『海賊王女』主題歌「海と真珠」も披露。ステップを交えながらもていねいに歌を紡ぎ、ステージに新鮮さをもたらした。ゲーム『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』の主題歌「lighthouse」では、LINO LEIAを中心にコーラス陣が一体となり、心地よい疾走感を生み出す。続く「nowhere」ではASCAとJUNNAが交互にボーカルを務め、総立ちの観客が拳を突き上げながら盛り上がった。
梶浦のソロアルバム『FICTION』収録曲「zodiacal sign」は、日本語詞が一切なく造語が連なる異色のナンバー。耳に残るメロディーとグルーヴ感でライブの定番曲となっており、この日もFBMのメンバーが順にソロ演奏を披露。観客から大きな拍手と歓声が送られた。
本編最後はFictionJunctionの最新アルバム表題曲「Parade」。梶浦のピアノから始まる壮大なサウンドにKAORIとJoelleの力強い歌声、YURIKO KAIDAとEMIKOのハーモニーが重なり、感動的な空間をつくり上げた。
アンコールでは、美しい照明とSEに包まれた幻想的な演出の中、ピアノイントロとともにシルエットが浮かび上がる。曲は映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』主題歌「炎」。観客が驚きと歓喜の入り混じった声を上げるなか、LiSAがシークレットゲストとして登場し、『Yuki Kajiura LIVE』初披露となる「炎」を歌い上げた。
続いて、絶賛公開中の映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の主題歌「残酷な夜に輝け」を、コーラスグループ・歌人三昧サマディとともにライブ初披露。レコーディングに参加したFBMと同布陣での演奏に、LiSAの鬼気迫る歌唱と迫力あるコーラスが重なり、特別な瞬間が刻まれた。
ラストナンバーは“キラーチューン”として人気の「stone cold」。梶浦が自らの還暦イヤーを飾るツアーの締めくくりに選んだ楽曲で、会場は幸福感に包まれながら幕を閉じた。
今回の『Yuki Kajiura LIVE vol.#21 ~60 Songs~』は、各地でASCA、JUNNA、KOKIA、EMIKOといった多彩なボーカリストを迎えながら展開。サブタイトルどおりに60曲を完遂し、梶浦が歩んできた音楽の幅広さを示す公演となった。ツアーの模様は、11月にTBSチャンネル1で放送されることが決定している。