タクシー運転手の浩二は、ある日85歳のすみれを東京・柴又から、神奈川の葉山にある高齢者施設まで送ることになった。
解禁となった場面写真には、“ただの送迎”だったはずの道のりが、やがてすみれと浩二にとってかけがいのない“たった1日の旅”へと変わっていく様子が写し出されている。紫のコートにサングラスをかけおしゃれをするすみれだが、タクシーから外の様子を眺める表情を捉えたカットからはどこか物寂しさがにじんでいる。
そして、浩二が険しい表情を浮かべながらハンドルを握るカットからは、仕事や家のことで悩みながらも家族のために働く父としての哀愁が漂っている。そんな2人がレストランで食事をするシーンや、イルミネーションに囲まれた街中を笑顔で楽しそうに歩くシーンも切り取られ、2人にとってかけがえのない特別な1日となったことが伝わってくる。
そして、浩二の妻・薫(優香)と娘・奈菜(中島瑠菜)が楽しそうに笑顔をこぼすカットも。一人娘の奈菜は憧れの音大の附属高校に進学したいという夢を持っているが、その裏で浩二と薫は高い学費を払うため家計のやりくりに四苦八苦する…という、山田作品らしい家族愛と人情にあふれたハートフルな物語を予感させる。
今作は、物語の多くがタクシー車内の会話劇で進んでいく。タクシー運転シーンのロケ撮影は、山田組らしく『男はつらいよ』シリーズの寅さんが生まれ育った土地でもおなじみの柴又から始まった。
すみれと浩二の旅のスタート地点でもある柴又帝釈天での撮影では、テストから木村本人がタクシーの運転を行い、本番も一発OK。