主演・倍賞千恵子、共演・木村拓哉による山田洋次監督の91本目となる最新作『TOKYOタクシー』(11月21日公開)において、倍賞が演じる終活に向かうマダム・高野すみれと、木村演じる鬱々とした日々を送るタクシー運転手・宇佐美浩二の“たった1日の旅”の瞬間をはじめとする場面写真6枚が解禁となった。

 タクシー運転手の浩二は、ある日85歳のすみれを東京・柴又から、神奈川の葉山にある高齢者施設まで送ることになった。
人生の終盤を迎えたすみれは、「東京の見納めに、いくつか寄ってみたいところがある」と浩二に頼み、幼少期から現在まで人生のターニングポイントとなった思い出の場所を寄り道することに。タクシーで旅を共にするうち次第に心を許したすみれは、初対面の浩二に、喜びと悲しみを織り交ぜた壮絶な人生を語り始める。そんな“たった一日の旅”が偶然出会った2人の心、そして人生を大きく動かしていく。

 解禁となった場面写真には、“ただの送迎”だったはずの道のりが、やがてすみれと浩二にとってかけがいのない“たった1日の旅”へと変わっていく様子が写し出されている。紫のコートにサングラスをかけおしゃれをするすみれだが、タクシーから外の様子を眺める表情を捉えたカットからはどこか物寂しさがにじんでいる。

 そして、浩二が険しい表情を浮かべながらハンドルを握るカットからは、仕事や家のことで悩みながらも家族のために働く父としての哀愁が漂っている。そんな2人がレストランで食事をするシーンや、イルミネーションに囲まれた街中を笑顔で楽しそうに歩くシーンも切り取られ、2人にとってかけがえのない特別な1日となったことが伝わってくる。

 そして、浩二の妻・薫(優香)と娘・奈菜(中島瑠菜)が楽しそうに笑顔をこぼすカットも。一人娘の奈菜は憧れの音大の附属高校に進学したいという夢を持っているが、その裏で浩二と薫は高い学費を払うため家計のやりくりに四苦八苦する…という、山田作品らしい家族愛と人情にあふれたハートフルな物語を予感させる。

 今作は、物語の多くがタクシー車内の会話劇で進んでいく。タクシー運転シーンのロケ撮影は、山田組らしく『男はつらいよ』シリーズの寅さんが生まれ育った土地でもおなじみの柴又から始まった。

 すみれと浩二の旅のスタート地点でもある柴又帝釈天での撮影では、テストから木村本人がタクシーの運転を行い、本番も一発OK。
2人の旅路は誰もが知る東京の名所をめぐっていくが、車内シーンの多くは渋滞が多発する東京の交通事情を鑑みて、車窓の風景を映したLEDパネルの中にタクシーを置いて撮影し、本物さながらの映像を実現するVP(バーチャルプロダクション)という技術を採用。劇場公開作品91作目にして、いまなお新しい撮影スタイルに挑み続ける山田監督にも注目だ。
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