「外傷性肩関節不安定症」の大手術を乗り越え、復帰に向けてリハビリに励んでいる平本蓮。徐々に練習を再開した様子をSNSでアップし来たるべき復帰に備えながらも、『RIZIN.51』で冨澤大智と対戦する弟の平本丈など、チームメイトのサポートに忙しい日々を過ごしている。

 新たに完成したジム「STILL THE GOAT」で約1時間にもわたり熱く語ってくれたオリコンニュースのインタビュー、Part.2は『RIZIN.51』で行われるラジャブアリ・シェイドゥラエフvs.ビクター・コレスニックのフェザー級王座戦の予想、11月の神戸大会のメインで行われる萩原京平vs.秋元強真、さらに朝倉未来、井上尚弥、そしてONE日本大会に電撃参戦が決定した安保瑠輝也など、ホットなトピックについて聞いた。

■シェイドゥラエフvs.コレスニックの予想断言 勝者と戦う朝倉未来は「突出した武器がない」

――『RIZIN.51』で行われるラジャブアリ・シェイドゥラエフvs.ビクター・コレスニックのフェザー級タイトルマッチは、どんな試合になると予想しますか?

【平本】シェイドゥラエフの圧勝ですね。コレスニックもキックボクシングみたいなハイペースで、相手に考えさせる暇を与えないくらいどんどん攻撃してくると思うけど、シェイドゥラエフはニュータイプって感じがするので。中央アジア系の選手でも、(ヴガール・)ケラモフはロシアとかに昔からいるベーシックに強い選手ですけど、シェイドゥラエフや(UFCミドル級王者のカムザット・)チマエフは新時代の中央アジアスタイルというか、完全にニュータイプなので。間違いなくベルトを防衛すると思います。

――この試合の勝者が『超RIZIN.4』でクレベル・コイケ選手に勝った朝倉未来選手と大みそかに対戦することが既定路線となっています。

【平本】いいんじゃないですか、自称1位とかずっと言ってるんで、さっさとタイトルマッチやらせればいいですよ。ただ、朝倉未来はどうやって勝つんだって話ですけどね。突出した武器が1つもないから。バランスはいいですよ、ある程度の打撃もグラップリングもできて、試合を過ごす能力も最近見せつけてるじゃないですか。展開を維持して試合を完走するファイトスタイルを見せてるけど、シェイドゥラエフって全てにおいてハイスペックでハイレベルなので、どこで勝負をするのか。YA-MANや鈴木千裕の凶暴性があれば可能性は見えるけど、朝倉未来はどこで勝負するかわからない。これはディスとかじゃないです。シェイドゥラエフは相当な強敵で、自分たちもどうやって勝つか真剣に悩んでいて。ボクシングを強化するっていっても、「石の上にも3年」じゃないけどジャブを打てるのは3年経ってからだし、MMAの選手でまともに打てるのって俺かYA-MANくらいしかないと思うんですよ。

――1つのパンチを習得するのに、それだけ時間がかかるんですね。

【平本】井上尚弥選手って、神がかってる強さで神々しさを感じますけど、たぶん色気のある練習を一切せず、小さいときからお父さんと作り上げた基礎練習を徹底してるはずで、公開練習のシャドーを見てたらすごいですよ。細かい基本的な動きにすべてが詰まっていて、これは地味でキツい練習をずっとやり続けてきた結果なんだなと。技術を1年教わったからって、アニメで伝説の剣を拾ってすぐに戦えるみたいなもんじゃない。朝倉未来のファイトスタイルは選択のセンスが良くて、その時に上回れる強さで相手を潰していく戦い方じゃないですか。僕とか鈴木千裕とかクレベルは突出している武器があるから、それを刺しに行くための作戦を組むんですけど、朝倉未来は相手によって自分のぶつけるところを変えるファイトマネージメントで、それでシェイドゥラエフに判定勝ちするなんて絶対に難しいですよ。

――シェイドゥラエフを15分コントロールするのは至難の業だと。

【平本】朝倉未来の長所は15分間つまらない試合をし続けられることなんですけど、それはシェイドゥラエフにはできない。フィニッシュを狙わないと無理だろって話なので、どこかで寝技に行くのか。上を取れる自信がついてるから、ワンチャン自分からテイクダウンを仕掛けるかもだけど、シェイドゥラエフが上を取らせてくれるとは思わない。どこをぶつけていくのか見えないからこそ、決まったら楽しみな試合ではあります。いずれ自分も朝倉未来と再戦するじゃないですか、その時のための十分な研究材料になりますから。どういう作戦を立てるのか見てみたいです。

■萩原京平vs.秋元強真は「1R2分くらい打撃戦で…」大和哲也のMMA初挑戦にエール

――『RIZIN.51』では、元K-1王者の大和哲也選手が37歳でMMAに初挑戦します。平本選手もこの発表には驚いたのでは?

【平本】僕が小学校5年か6年に魔裟斗さんが引退して、翌年のK-1の63キロトーナメントで大和選手が久保優太を決勝で倒して優勝した時から、僕はファンとして見ていました。僕がK-1で試合をするようになって一緒の大会の時はよくお話をさせてもらったり、仲良くさせていただいたレジェンドですし、絶対に負けるって言われてた山崎秀晃とのタイトルマッチ(2022年4月)に左フック1発でKOしたり、いろんな伝説を証明してきた選手ですよね。これが最後の挑戦だと思うので、応援したいけど心配でもあります。対戦相手の奥山選手は見るから体が強そうだし、キックだったら当たるはずのないパンチが届いたり、打撃をガードしたグローブの上からでも脳が揺れたりするので、どこまで準備しているのか。ただ、レジェンド選手がもがきながら新しいことに挑戦するっていうのは、格闘家として本当に生きているっていう感じで、心配な気持ちもあるけど本当に大好きな選手なので応援したいです。

――K-1で一緒に戦っていた2人が、紆余曲折を経てRIZINで再会するとは。

【平本】WBCムエタイ世界王者になったり、アメリカの大きな大会でケビン・ロスっていう人気ファイターに現地で勝ってチャンピオンになったり、栄光も知っているから、今さら新しいことをしなくても十分じゃないですかっていう気持ちもあるけど、もし勝ったらすごくうれしいです。会場で会えるのは楽しみなので、頑張ってほしいですね。

――11月3日の『RIZIN LANDMARK 12 in KOBE』では、メインカードに萩原京平vs.秋元強真が決定しました。どんな展開を期待しますか?

【平本】難しいですね。秋元くんのワンツーは想像以上に伸びると思うし、縦のラインの動きって人間は反応しにくいんですけど、彼は余計な動作がなくストレートをまっすぐ縦に打てる選手です。新世代というか、打撃ができないと今の時代は無理だよっていうのを感じさせる、それくらい体に染み付いたストレートで本当にすごい武器だなと思います。

――それを10代で取得しているのだから、本当にすごい選手です。

【平本】逆に萩原の打撃は満遍なくて当て勘もいいし、カーフキックも自分で得意意識があると思うんですけど(スタンスが)喧嘩四つだし、内側から蹴るカーフもあるけど、与座優貴選手や野杁正明選手みたいなキックの上級者が打つレベルの技術なので。秋元くんはボクシングもレスリングもうまいけど、萩原がどこまで立ってる時間が嫌だなって秋元くんに思わせるかですよね。萩原が下の蹴りとかを混ぜて、秋元くんに「意外とやりづらい」って思わせられるか。打撃を見切られたら秋元くんはテイクダウン能力も高いし、グラップリングになったらどうなるのか。ただ、体のサイズはけっこう違って萩原のほうがデカいので、その辺の差も出てくるのかな。

――萩原選手はTRIBE TOKYO MMAで練習して1年ほどが経つので、グラップリングの成長もポイントですね。

【平本】練習環境はすごく恵まれてると思うので、すぐに一本を取られるとかはないと思いますが、変にバックチョークを意識しすぎてなかなか立てなくて、秋元くんが上のポジションから殴り続けてポイントを取るっていうのが、けっこうリアルに予想できる展開になるのかな。1ラウンド2分半くらいまで打撃戦で、ラスト2分くらいで秋元くんがテイクを取って、萩原が首のケアの意識はあるものの立つ動作をなかなかできずに時間を過ごすパターンも、秋元くんだったら作ってきそうな感じもあります。どっちが勝つにしてもKOはないのかなと思いますけど、どんな試合になるか楽しみです。

――ちなみに、萩原選手は会見で「こいつらの陣営は真実でないことをメディアでペラペラ喋って印象操作をするのが得意」と言っていましたが、平本選手も思うところはありますか?

【平本】そうなんですね、僕はあんまりないです。JTTというより朝倉未来がそういう人間なだけなので。他のJTT選手からの被害は全然ないと思います。朝倉未来単体がキモいだけです(笑)。

■「グレゴリアンは安保の一番苦手なタイプ。キックの感覚を短期間で取り戻せるか」

――平本選手の盟友というか腐れ縁というか、安保瑠輝也選手がONEに参戦しマラット・グレゴリアンとの対戦が発表されて大きな話題となりました。すごく楽しみな試合ですね。

【平本】榊原社長から少し前に「安保が今RIZINで何かをやってもそんなに跳ねないから、1回ONEでデカくなって帰ってきてもらったほうがいいよねって」と聞いて、「確かにそうですね」って話していました。アイツは日本大会で客を呼べるからいいと思うけど、ずっとボクシングの練習に集中していたじゃないですか。MMAをやるためにボクシングの練習をするのはすごく良くて、スタンスとか足の使い方はMMAに生かせる部分があるけど、ボクシングとキックはマジで違う競技なので。

――同じリングでの立ち技ファイトですけど、全く異なるんですね。

【平本】そもそも重心から違います。最近の安保はパンチを練習してきたけど、元々は蹴りが武器だったし、小さい頃からやってきて染み付いた基礎技術があるから、1~2ヶ月の練習で肺活量さえ戻せばバシバシ蹴れると思うけど、キックの技術って毎年毎年で進化していくじゃないですか。わかりやすくいうと、チーム・バシレウスの与座選手や野杁選手みたいなトップどころも、明日にでも辞めたいってレベルの地味でツラい練習を毎日やって積み上げて、だからこその技術とパフォーマンスを試合で発揮できる。与座選手なんてキックボクシングの新形態、あれも新世代というかニュータイプですよね、新時代の強さがあります。

――グレゴリアン選手はどんなタイプなんでしょうか?

【平本】グレゴリアンも体を見る限り、ずっとコンスタントにトレーニングを積んでるタイプだと思うんですよ。安保ってスター性があるから、周りでチヤホヤする人や誘惑も多いと思うし、アイツも旅とか行ってたじゃないですか。それが悪いってわけじゃなく、人生にそういう時期も大事ですけど。安保がK-1辞めてから、ずっとグレゴリアンを倒すことを目的として練習してたら全然勝てると思うんですけど、ボクシングやったりMMAを体験してみたり、エキシ専属ファイターになったり、目立つ内容が思いつかないからいきなり巨人とやってみたり…。練習はずっとしてると思いますよ、いいボクシングのコーチと出会って真面目にやって、フィジカルもやってるだろうけど、キックボクシングに真剣に嘘をつかず裏切らず、本当に大好きで誠実にやってきたかと言ったら、そうじゃないですよね。そういう期間があったから、試合でキックのパフォーマンスを全力で出し切れるのか。試合まで1年くらいあったら、安保はONEの上位にも切り込める能力と才能と勝負する勘が間違いなくあるんですよ。ただ、キックの感覚を数ヶ月で取り戻せるのかっていう。

――試合が発表されたのが、大会の2ヶ月前でした。

【平本】試合に向けて誰とスパーリングするのか、日本でグレゴリアン対策のスパーリングやってくれる人がいるのかって話ですよね。例えば、大阪まで行って海人選手にお願いするのかって言っても、いつか試合するかもしれない相手だし協力体制もないじゃないですか。チーム戦でキックをちゃんと分かるトレーナーを付けないと意味がないし、現実的に考えて難しい。安保は「俺は人にできないことをやってみせんねん」みたいなタイプで、ボクシングやったりMMAやったりブレブレだって自分でも認めてますけど、それがどう試合に影響してくるか。もちろん、絶対に勝てないという訳じゃないですよ。

――ブレブレがいい方向に出る可能性もあります。

【平本】そうそう、パンチがすごく進化してバコンって当てるかもしれない。ボクシング技術が進化したから本人もバンバン当てたいと思うだろうけど、グレゴリアンは今までの相手みたいにぬるい選手じゃないし、ボクシングのスタンスでスネを蹴られて気づいたら圧力をかけられて、安保が一番苦手なタイプだと思うんですよ。ファイトスタイルはまだチンギス・アラゾフの方が意外と相性がよくて、技術勝負をしてパンチを当てる可能性は全然あるけど、グレゴリアンは思いっきり距離を潰して腹から潰すタイプだし、去年の日本大会であのシッティチャイも腹から潰されてましたから。そんな相手に何ができるのかって感じですけど、今回の日本大会に安保がいるだけで盛り上がり方が一気に変わると思うんで、そこは楽しみにしています。

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