原作は、第2回大藪春彦新人賞を受賞した西尾潤による同名小説(徳間文庫)。貧困の中で闇ビジネスに手を染めざるを得なかった若者3人の“3日間”の出来事を3人それぞれの視点を交差させながら描く。岩井俊二監督のもとで長年助監督を務めた永田琴がメガホンを取り、社会的テーマを織り込みながら、3人の運命と友情をリアルに浮かび上がらせる。
拭えない過去を持ち、闇バイトで生計を立てるタクヤ(北村)、愛情を知らずに育ったタクヤの弟分・マモル(林)、淡々と闇を生きる裏社会の運び屋・梶谷(綾野)、闇ビジネスに加担するパパ活女子・希沙良(山下)らが、それぞれ抱える闇と希望が垣間見える。
タクヤ編は「過去を捨てたかったのはお前だろ」という一言からスタート。“客”に対して冷酷な表情を見せる一方、弟のように可愛がるマモルには「一緒に抜けさせてあげなきゃダメだと思って」と語りかける優しさが垣間見え、闇の中でしか生きられなかった彼が抱える悲しみの記憶と、わずかに信じる未来・マモルへの希望が交錯する映像に。
マモル編は他人を極端に恐れていた彼が「カラオケ行きたい!」とタクヤに甘えられるほど心を許すようになっていく様子が映し出される。“ずっとこの日々が続くと思っていた“。だが、そんなマモルの希望を打ち砕くように、周囲には流れる不穏な空気。「マモル、幸せになってくれ」とささやくようなタクヤの言葉、そしてマモルが号泣する理由とは?不器用ながらも深い愛情で結ばれた、ふたりの関係も切り取ったものになっている。
梶谷編は、全てを達観し、闇の世界を飄々と生きていた男が、再び“熱”を取り戻していく姿が。「めんどくせえ……」と吐き捨てながらも、タクヤを思いやり、全力で戦う梶谷の姿は、滲み出る優しさと覚悟が胸を打つ映像になっている。「梶谷さんしか信用できなくて」と、タクヤがつぶやくその言葉も、梶谷の内奥にある情の深さを静かに捉えている。
希沙良編は、「ちょっといい話があるんだけど」「あざす!」と、一見軽やかに闇ビジネスに加担する彼女の姿を通して、うちに抱える葛藤を映し出す。「無理なんだけど、ああいう人だますの」と罪悪感に揺れる彼女に、タクヤの言葉が突き刺さる――「他人の人生より自分だろ」。泣き顔から一転、自分を守るための強い決意を宿した希沙良の視線が、切なさすら感じさせる映像となっている。