郷は、芸能活動が半世紀を超え、「お嫁サンバ」「よろしく哀愁」「2億4千万の瞳」「GOLDFINGER’99」など、時代を超えて愛されるヒット曲を数多く世に送り出してきた。
「ファンがいるから、僕がいる」。70歳を迎えた今も、少しでもファンに愛される存在であり続けるため、日々の努力を惜しまない。20代から続けている週3回のトレーニングを欠かさず、エンターテインメントの世界を走り抜ける。郷自身は「時代の変化に必死でついていっているだけ」と笑う。何か新しいことを始めなければ、歌手としての道は続かないと、進化し続ける。
今年発売の新曲では、“昔のアイドル”をテーマに掲げ、人気アイドルグループなどを手がける振付師に依頼。5月から始まった全国ツアーでも、才能あふれる若手演出家やアレンジャーを迎え、新しい「郷ひろみ」を作り上げようとしている。
そんな郷が、若い頃から最も大切にしているのは、ファンと直接触れ合えるコンサート。曲順や構成もすべて自ら考え古い曲のなかには、歌詞や振り付けを忘れてしまっているものもあるが、笑いながらYouTubeで必死に思い出す。
いざ舞台に立つと人が変わったように厳しくチェックを重ねる。照明の位置や角度、背景ビジョンの内容、衣装の見え方、歌い出しのタイミング…。「準備を100%していないと、本番がうまくできるわけがない」と語る通り、細部にまで目を配る。
迎えた本番初日。最後の曲に差しかかったとき、郷の目から珍しく涙があふれた。この年まで声援を送り続けてくれたファンを見て、自然と込み上げてきたものだという。「シミもシワも増えた。でも、これまでの人生で恥ずかしいことは何もない」。