■病気になり振られたことで自己肯定感が皆無に、マスク生活を抜け出せた“推し”との出会い
――“推し”に出会うまで、自己肯定感がどん底だったとのことですが、周囲からの言葉や態度で傷ついたことや精神的に辛い経験、コンプレックスの要因となった出来事があったのでしょうか?
「とある会員制のバーで横に座っていた、偶然居合わせたお笑い芸人の方に『横の子は可愛いのに、お前ブスだな!』『人間じゃない、化け物じゃん』と言われました。自分が思う以上に自分の外見の価値というのは低いと理解し、そこから二度目の二重の修正手術をして、服装なども変えました。それまでは個性的で派手色な服が好きだったのですが、モテを意識した服装に変え、私なりの努力をしてみました。
雰囲気を変えたことで、初めて『この人だ!』と思った人と付き合うことができたのですが、私が脳梗塞になったことで、『守ることができない』と言われすぐに別れてしまいました。おそらくこれは建前で、もし私が絶世の美女だったら、彼はきっと病気になった私を守ってくれていただろうなと感じました。そのとき、自分自身で思う自分の外見の価値が底辺まで落ち、自分が選ばれないすべての原因は自分の外見にあると考えるようになりました」
――病気に失恋…あまりに壮絶な体験をされてきたのですね。
「仕事面でも、その影響は大きく出ていました。私は映像制作会社で働いているのですが、番組収録時、出演者の前で説明できなくなりました。目の前にいる人たち皆が自分をブスだと思っているような気がしてしまい、大勢の前で自分の企画をプレゼンすることもできなくなってしまいました。仕事でうまくいかない理由も全部外見のせいだと思うようになり、自己肯定感が皆無となっていました」
――投稿にはマスクが手放せなくなったとつづられていました。
「すべての人間が自分より可愛い・美人だと思うようになり、どうせ外見で決まると外見至上主義になってしまいました。醜形恐怖症にも似た感じですが、鏡で自分の顔を見ることができず、外見を晒すことが急に怖くなり、街中でガラスに反射する自分すらも怖くてマスクを外すことができない生活になっていました」
――乗り越えられるきっかけは?
「その時出会ったのが、推しのStray Kidsバンチャンさんの存在です。ステージでは力強いパフォーマンスをして、リーダーとしてグループを率いている姿がとてもかっこよかったんです。当初はYouTubeや音楽を楽しむだけだったのですが、こそこそせずいつかマスクを外してコンサートに行けたらいいなと思いました。『これまでは外野だったけど、自信を持ってイベントにも参加したいな』と思うようになり、行くのならば本格的に美容を頑張ってみようと決意しました。それと同時に、これまで私にブスと言ってきた人全員を見返してやろうとも決心しました。」
■イベントで推しから確定ペンサ「分厚く高い壁だったコンプレックスが小さくなった瞬間でした」
――anzoochanさんのSNSは「推しから確定ペンサをもらうまで」と題されているように、推し活をする一人の女性のドキュメンタリー要素もある印象を受けますが、そのために陰ながら凄まじい努力をさせるほどの推しへの愛には感動します。
「あくまでも、これまで“選ばれない人生”であった自分に終止符を打つために美容を始めました。せめて自分にゴールをつけてあげたかったという思いが強くありました。ただ、SNSで自分の美容を発信していく上で、どうしたら多くの人に見てもらって、客観的な意見をもらうことができるのかを考えたときに、1つの物語を作ることを思いつきました。物語の候補はいくつかあったのですが、自分が一番危惧していた、整形沼にハマってしまうことを防ぐためにも、大勢いるファンの中で、確定ペンサがもらえれば、運が良くたまたまであっても、『推しが自分を選んでくれた』と自己満で自分自身に納得できるような気がしました。要は推しに救いを求めていた感じです」
――現状、確定ペンサをもらうことはできたのでしょうか?
「大前提、私の推しは老若男女問わず幅広くペンサをしているので、本当に確定ペンサなんて運でしかないんですが…。逆に言えば、運よくバラをもらってしまったら自分がまだ満足していなくてもそこで整形終了としていました(笑)。
夏に韓国で行われたイベントで、推しが至近距離にきて、ハイタッチができるチャンスがありました。周りの方たちが手を伸ばし、ハイタッチをしている中、どうしても、かつて芸人の方から言われた『横の子は可愛いのにお前はブス』という言葉が脳内にリフレインされてしまい、“怖い”という感情を一番に感じてしまいました。目の前にいる推しが自分を見て不快に思うかもしれない、至近距離だからこそ、比べられて顔を見られる。なるべく目立たないようにと、手を伸ばせず、私は『バイバイー』と軽く胸の前で小さく手を振って、ただ見ているだけでいました。すると、目の前に来たバンチャンさんの方から手を伸ばしてくださって、一瞬だけ握手をすることができました。大勢のファンが手を伸ばす中で、自分に手を伸ばしてくれたという、願ってもみなかったことで、当時は動揺しかなかったです。ですが、率直に本当に嬉しくて、すべてが報われた瞬間でもあり、分厚く高い壁となっていたコンプレックスがかなり小さくなった瞬間でもありました」
――それはすごいです! これまでの美容への向き合いが報われた瞬間ですね。そんなanzoochanさんにとって、推しとはどういった存在でしょうか?
「推しのおかげで、さまざまなことに挑戦することができて、仕事も頑張ることができています。これまで自己肯定感がどん底の中、光を与えてくれ、底辺にいた私に手を差し伸べて救い上げてくれたバンチャンさんには感謝しきれません。
だからこそ、これからもずっと応援し続けていくためにも、お金はデッドラインを決めています。自分を救ってくれた推し活を苦い思い出にしたくないからこそ、自分のペースで推し続けられるようにブレーキをかけています。それと、推し活をする上では、あくまでも私はファンとして、『供給物をいただいていることに感謝する』というマインドでいます。
――最後に、今後の夢や目標、さらに挑戦したいことなどあれば教えてください。
「推しからペンサをもらうことで、1つ自分自身への自信につながりましたが、まだまだ外見に対してコンプレックスも残っており、男の人の前に立つことが怖い瞬間もあります。これまで生きてきた中で、作られてしまった痛みや傷は消えることは決してないと思いますが、受け取ってしまった痛み以上の幸せを今後は自分自身で作っていきたいと思っております。普段、映像制作会社でディレクターとして、脚本家としてお仕事させてもらっているので、いつか自分の作品が推しに届いて、光を還元できたらいいなと思っています。それが今の夢です」
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