12月14日放送の最終話<拡大SP>で、ついにその20年にわたる壮大な物語に幕が下ろされる日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』。競馬の世界を舞台に、ひたすら夢を追い続けた大人たちが、家族や仲間との絆で奇跡を起こしていく熱きストーリーは、山王耕造(佐藤浩市)の遺志を継いだ栗須栄治(妻夫木聡)や中条耕一(目黒蓮)、そしてレースに臨む全ての人たちの思いを乗せ、運命の有馬記念を迎える。


 山本周五郎賞やJRA賞馬事文化賞を受賞した早見和真氏の同名小説を実写ドラマ化し、競馬界の“プロ”たちも、監修者としてそのリアリティーを支える。今回、本作で調教師監修を務めた大竹正博調教師に、ドラマへの思いや最終話の見どころなどを聞いた。

■調教師・広中演じる安藤政信に「僕に似てるなと」

――今回「調教師監修」として、具体的にどのような監修をされたのか、お聞かせください。
脚本の段階から入らせていただき、撮影シーンでは実際と違っておかしいと感じるところを指摘したり、調教師の業務の範疇で関わっているシーンを監修しました。

――俳優の皆さんともお話されたのでしょうか?
僕の方から、演技について何か指摘するところはほとんどなかったです。俳優の方々は、こちらの意図しているものをちゃんと汲み取って、何も言わずとも“演技”にしてしまうという印象を元々持っていたので、むしろ安心して見ています。皆さんが演じられているのを見て、感動するようなところばかりです。

調教師・広中博役の安藤政信さんは、トレセン(トレーニングセンター=競走馬の調教施設)にいらして、一日僕の仕事について回るという日があったのですが、ドラマを見ていると、どこか僕に似てるなと思うシーンもあって、参考にしてもらっているのかな、とは思いました。

――具体的には、どのようなところが似ていると感じられましたか?
馬の状態を理解するのは難しいことなのですが、僕が本当に大事にしているのは「馬との距離感」なんです。近すぎても、見えてこないものがあって、遠すぎても当然見えないものがあります。安藤さんは、そういうところも理解してくれているのかなという感じがしますね、演技の中で。

あとは、これはセリフの部分でなのですが、正直に、しっかりと馬主さんに報告するというところは、似ていると感じましたね。
僕も、“馬ありき”でこれまで調教師をやってきたので、第9話でロイヤルファミリーについて、広中が馬主の耕一(目黒蓮)に対してはっきりと厳しい話もしていたところなどは、特に共感できましたし、自分とも似ているなと思いました。

――撮影現場でアドバイスされたことなどはありますか?
エキストラが持っている物や、警備員の配置だったり、競馬に詳しい方たちが見てもきっと分からないであろうというところまで、すごくこだわりましたね(笑)。例えば、馬のボロ(ふん)を拾う作業をする人はどこに配置するかとか、そんなところにまでこだわっていました。

■「何回か泣きました」 栗須の涙につられ泣きも

――大竹さんからご覧になって、特に印象に残っているシーンをお教えください。
12月14日に放送される最終回ですが、僕は今までの9話までを全部リアタイで見させてもらっているんです。何回か泣きました。やはり、レースシーンの後に勝って喜んでいるシーンはいいですね。チームで勝っていくというところは、グッときます。そこはやはり、演出の方々などが得意とするところなのかなと思います。本当、「泣かすのがうまいな」と毎回思いますよね(笑)。

でも僕自身は実は、レースで勝っても泣いたことが本当にないんです。有馬に勝った時は、みんな僕が泣くんじゃないかと思っていたらしいのですが、涙を流すというよりも、大喜びしました。


――レース以外のシーンで心に残ったシーンなどはありますか?
ありすぎて、なかなかこれを一つ、というシーンを挙げられないのですが、最初の耕造と栗須のやり取りから、回を重ねるごとに信頼が築かれていって、それが心に残っています。

「絶対に俺を裏切るな」と言うセリフがあるぐらいなので、耕造の“人に対する信頼”はずっと一本、筋が通っている中で、耕造自身も迷っているところで栗須が耕造を正すようなシーンもあって…。栗須の涙と同じように、僕も一緒に涙を流してしまう感じでした。

■馬主もハマる! “人間ドラマ”に引き込まれる競馬関係者続出

――『ザ・ロイヤルファミリー』が放送されてから、周りの反響はいかがでしたか?
競馬関係者の中でも、もう皆さん至るところで、ロイヤルファミリーの話をしています。馬主の方々からも、ドラマを見ていると聞きます。先週お会いした馬主さんも、やはり「泣いている」とおっしゃっていて、馬主の奥様もよく泣いているという話になったり、すごい反響です。

やはり、ドラマで描かれている“人間模様”のところで、一緒に泣いてしまうという方も多いのではないかと思います。

全然競馬とは関係ない友人にも、ようやく“調教師という仕事が理解できた”と話をしてくれた方がいて、これまでの競馬を取り上げてきた映画やドラマとは違って、皆さん“人間ドラマ”と捉えて、良いドラマだという風に言ってくださる方が多いなという印象です。

■勝っても負けても「リスペクト」――最終話の見どころは?

――大竹さんが感じられるこのドラマの魅力はどのようなところでしょうか?
これは僕が1番最初に皆さんとお会いした時にもお話させてもらったのですが、やはり“1頭の馬”に携わる人間がたくさんいるということは、それだけいろんな人間模様があるんですよね。それが伝えられれば、というお話をしました。

僕は、「思いが強い陣営こそ勝つべきなんじゃないか」と思っていて、このドラマではちゃんとそれが表現できているのかなと思います。見ていても、もうすでにそれがちゃんと伝わっているような感じがします。


最初は“監修”という立場を考えてリアリティを追求していかなければいけないのかなとも思っていたのですが、知らない人たちにとっては、それがリアリティかどうかも分からないので、であれば、いかに皆さんの感情が一つになっていけるかどうか、というところがやはり大事なのかなと、やっていく中で、どんどんそういう気持ちになっていきましたね。

――大竹さんから見た、最終回の見どころを教えてください。
最近はよく、ドラマや映画で“伏線回収”というワードが飛び交うと思うのですが、この『ザ・ロイヤルファミリー』も、「ああ、あれか」という何かが……。

競馬の世界は、敗者がいるからこそ、勝者がいます。1頭で競馬はできないので。敗者もリスペクトするという気持ちは、皆、ちゃんと持ち得ているんです。そういったことを、最終回にちゃんと教えてくれる結末が待っています。そこが見どころかなと思います。
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