――『ズートピア』の続編が決まった時の率直な気持ちは?
【森川】正直、ものすごくうれしかったです。ディズニーの発表(2024年8月)で『ズートピア2』の文字を見た瞬間、思わず小躍りしました(笑)。今年の1月に正式発表があって、改めて「本当に続編が来るんだ」とワクワクしました。ディズニーのキャラクターは、一度生まれるとずっと愛され続ける存在ですよね。ファンの皆さんの思いがきちんと届いて、『ズートピア2』につながったんだと思うと、本当に感慨深いです。
――改めて<ズートピア>の魅力は、どんなところにあると思われますか?
森川】たくさんの動物たちがお互いをリスペクトし、尊重し合いながら暮らしていてて、問題がまったくないわけでないけれど、それもすべてを包み込んだ上で、「誰もが何にでもなれる」というユートピアのような理想と現実、その両方がちゃんと描かれているところが大きな魅力だと思います。
それは、今の僕たちが生きている現代社会にもすごく重なる部分がありますよね。ただの綺麗ごとではなくて、ジュディが田舎から憧れの<ズートピア>に出てきて、「何にでもなれる」と信じながらも、社会の不条理や思い通りにいかない現実にぶつかっていく。その中で夢に向かって進もうとする姿や、「なりたい自分になろう」とする思いとまっすぐ向き合っているところが、多くの方の心をつかんでいる理由なんじゃないかなと思います。
きっと皆さん、それぞれがジュディに自分を重ねたり、ほかのキャラクターに自分を投影したりしながら観ている。そこがこの作品の、いちばんの魅力なんじゃないでしょうか。
――担当されているキツネのニックも人気の高いキャラクターですが、どのように捉えていますか?
【森川】1作目をやる前と、やった後、そして今回『ズートピア2』の収録を終えて、印象はずいぶん変わりました。ニックはもともと詐欺師で、口も達者なキャラクターですが、子ども時代のトラウマも抱えている。けれど、ジュディと出会ってから、いろんな鎧が少しずつはがれていって、根の部分にあるとても優しくて、思いやりのある性格が見え隠れするようになってきたんですよね。何しろイケボですし(笑)、かっこいいキャラクターですが、ニックは自分に正直になった瞬間にこそ、最大の魅力が出るんじゃないかと思っています。
――収録で心がけていたことは?
【森川】物語の中では前作の“1週間後”なので、キャラクター自体には大きな変化はありません。でも、ジュディ役の上戸さんとは9年ぶりの再集結。一番気をつけたのは、「声が変わった」と思われないことですね。ファンの皆さんに違和感を持たせたくなかったので、そこは特に意識しました。
ジュディ役の上戸さんの声を最初に聞いたときは、「うわぁ、ノリノリだな」と思いました(笑)。正義感にあふれて一直線なジュディのテンション感が、エンジン全開で耳に飛び込んできて、「これは絶対にいい作品になるな」と直感しました。上戸さん自身の『ズートピア』への思いの強さも伝わってきましたね。
そして今回は、ニックが“キツネ初の警察官”として正式にジュディとバディを組む。その中で描かれるふたりの距離感が、本当に絶妙で、すごくドラマチックです。ファンの皆さんが一番気にしているのも、やはりこのふたりの関係性だと思いますし、「これが見たかったんだろうな」と感じられる仕上がりになっていると思います。
――本作では、ニックの感情の変化がとても丁寧に積み上げられていきますね。
【森川】事件を解決することはもちろん大事ですし、ニックにも正義感はある。でも彼にとって「一番大切なものは何だろう」と考えたとき、やっぱり“ジュディと一緒にいること”が、とても大きいのではないかと感じるんです。せりふのないところにも、ニックの表情やしぐさに、たくさんの感情が詰まっている。ぜひ見逃さずに感じ取ってほしいですね。
僕自身、せりふがある場面は言葉から心情を推し量ることができますが、声優としては“せりふがない場面”のほうが、より仕事のしがいがあると思っています。ニックとどうシンクロしていくかは、せりふがない間の感情をどう作り、どう表現するか、その積み重ねをとても大切にしています。
――ふたりの関係性に期待しているファンへメッセージを。
【森川】……キュン、です(笑)。今回は100年ぶりに現れたヘビ、ゲイリーとズートピア誕生の謎を追いながら、ジュディとニックの絆が試される物語なので、近づいたり、すれ違ったりするふたりの“微妙な距離感”の変化を、楽しんでもらえたらうれしいです。
今年の12月で、ちょうど声優活動40周年になります。その記念の年に『ズートピア2』が公開されるというのは、本当にうれしいですね。前作以上に新キャラクターが増えて賑やかですし、脚本も本当に奥行きがある。何度でも劇場に足を運んでほしいです。ズートピアで人気のポップスター、ガゼルが歌う劇中歌「Zoo」も最高ですし、年末年始に心が温かくなる作品になっていると思います。
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