愛犬が人間の子どもになる――。一見すると奇抜な設定のLINEマンガのオリジナルコメディマンガ『マルは子犬。
』が、世界中で話題を集めている。昨年の国際的なウェブトゥーンコンテスト「2025 WORLD WEBTOON AWARDS」で本賞を受賞し、作中のセリフはSNSでミーム化され、企業コラボも相次ぐなど、作品世界はマンガの枠を越えて広がりを見せる。ギャグ表現が埋もれがちだったウェブトゥーン界で、なぜ本作は“共感”と“熱量”を獲得できたのか。同作の担当者に見どころとヒットの背景を聞いた。

■犬あるある×子どもあるある 笑いと温もりが支持を集める

 一人暮らし3年目の主人公・内野友里が、ある朝目を覚ますと、プードルミックスの愛犬・マルが人間の子どもになっていた。その日から友里の日常は一変する。好奇心旺盛で家中を走り回り、イタズラも絶えない小さなモンスターに振り回される毎日。しかし、マルをきっかけにご近所付き合いが生まれ、マルの成長を見守る中で、友里自身の心にも少しずつ変化が訪れていく。

 笑って、泣けて、ほっこりする異色のコメディ『マルは子犬。』を手がけたmojoは、ウェブトゥーン界に新風を吹き込んだ。レビュー欄には、「犬あるあると子供あるあるを兼ね備えた最高のマンガで同意しかない」「かんわいいーー!!!!うちのわんこも人間?になったらこんな感じなのかなって思うと愛おしい…」「なにこれ、新しいw!」「あとを引く作品」など、特異な設定と心温まるエピソードに魅了された読者の声が相次いでいる。

 人気の理由のひとつは、愛犬家なら誰もが一度は思い描く「うちの子が人間になったら?」という発想を軸に、育児やペットとの暮らしにまつわる“あるある”をリアルに描いている点だ。
ペットが人間になる物語はこれまでにも一定数存在するが、多くは成人した姿で描かれ、飼い主の恋愛相手や人生のサポート役といった、いわばヒーロー・ヒロイン的な役割を担うケースが多い。

 一方、本作で描かれるマルは、幼児として登場する。自立心や協調性が芽生える反面、わんぱく盛りで手がかかる時期でもある。その年齢設定に犬としての習性も加わることで、何気ない日常が、予想外のトラブルや思わぬ発見、温かいユーモアで彩られる。子育て経験のない主人公・友里の奮闘と葛藤は、愛犬家だけでなく子育て世代やワンオペ育児に向き合う読者の共感を呼ぶ。

 また、階下に住む青年や強面の幼稚園の先生、独自の健康法にハマる老人など友里とマルを取り巻く人間関係も多彩で、さまざまなバックボーンを持つ登場人物の視点から物語を追える点も、作品世界に奥行きを与えている。

■グッズやコラボが続々 作品世界はマンガの外へ

 特徴的な作画も、本作を語るうえで欠かせない要素だ。細密で流麗な描写が主流のウェブトゥーン界にあって、『マルは子犬。』はシンプルで親しみやすいタッチを採用。説明的な描写が少なく、テンポよく読み進められる構成で、日常の出来事を積み重ねていく物語の性質と、作画スタイルが自然に調和している。

 昨年開催されたウェブトゥーン産業の発展に寄与した作品をグローバルに公募し、優秀作品を選定するアワード『2025 WORLD WEBTOON AWARDS』で本賞を受賞し、高い評価を得た本作。ヒットの背景について、担当者も「マルの親近感のあるデザインが、まず大きなポイント」としたうえで、「ゆるやかなエピソードの中に、さまざまな背景や状況を持つ人物を描くことで、多くの方が共感できる作品になったのではないか」と分析する。


 特に韓国では、マルの口調が可愛いと話題になり、人間になってすぐの台詞「ほらっおてて!すっごいでしょ!?」などがSNSでミーム化。さらに、K-POPグループ・NMIXX(エンミックス)のヘウォンが歌うアニメ「マルは子犬。」の劇中歌も注目を集め、カバー動画が多数投稿されているという。

 グッズ展開についても、ポップアップストアは事前予約が早期に終了。食品や菓子、文房具、携帯関連など、さまざまな企業とのコラボレーションが進み、プロ野球球団とのタイアップでは、着ぐるみのマルが始球式に登場。作品の認知はマンガの枠を超えて広がっているという。

 こうした反響を受け、読者が作品に触れやすい仕組みも用意されている。『マルは子犬。』は、LINEマンガが提供する新機能「∞無料(無限無料)」の対象作品だ。「∞無料(無限無料)」は、対象作品を待ち時間なしで読み進められる仕組みで、先読みの有料話が含まれる場合でも、一定期間後には無料話へと切り替わり、最終的に完結まで全話を無料で楽しめるのが特徴。気になった作品を一気読みしやすい導線として、読者に利用されている。

 「純粋で心温まる作品ですので、ぜひほっこりとした気分を味わっていただければと思います!」と担当者。『クレヨンしんちゃん』(臼井儀人/双葉社)、『ちびまる子ちゃん』(さくらももこ/集英社)など、子どもを軸に描いた作品が世代を超えて愛されてきたように、『マルは子犬。
』もまた、長く支持される可能性を秘めた一作と言えそうだ。

(文・榑林史章)
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