原作は、シリーズ累計130万部を突破した日ノ原巡氏による人気作。獣医を志す失恋したての“スパダリ”候補生・静真(冨田)と恋に臆病なツンデレフォトグラファー・湊(NAOYA)の賭けから始まる恋を描く。
舞台『セラピーゲーム』は、ドラマ最終話から約1ヶ月後の今月16日から25日にかけて、東京・日本青年館ホールで上演中。ドラマで湊役のNAOYA、静真役の冨田、樹役の佐藤瑠雅、翔平役のHAYATOが続投している。
物語は、目覚ましのアラームが鳴り響くホテルの一室からスタートする。恋に臆病なゲイのカメラマン・湊は、失恋したばかりの獣医学生・静真とミックスバーで出会い、勢いで一夜を共にしてしまう。静真がその出来事をまったく覚えていないことに戸惑い、問い詰めていく湊。不安定な心情を抱えた2人の関係性がテンポよく描かれていく。湊と静真のぎこちなくも切実な感情の揺れが、せりふの間や視線、呼吸の変化によって丁寧に描かれており、特に湊の「踏み出したいのに踏み出せない」臆病さと、静真の「自分の気持ちにまだ名前をつけられない不器用さ」が、舞台上でより立体的に伝わってきた。
雨宿りのシーンは本作屈指の名場面で、音楽・ダンス・照明・映像が溶け合い、2人の感情が静かに、しかし、確実に高まっていく様子が非常に美しく表現されている。湊が静真を誘うという原作では刺激的に描かれる展開を、本作では2人の距離の変化や仕草によって丁寧に表現。息をのむほどの繊細さと美しさ、しなやかさ、そして想い合う気持ちが指先から伝わり、客席には緊張感と静けさが広がり、物語の大きな転換点として強い印象を残した。
一方、静真と湊がデートに出かける遊園地のシーンでは、アドリブを交えたかけ合いコーナーが設けられ、公演ごとに異なる内容が披露される。キャスト同士の軽妙なやり取りや意外な一面が明かされ、客席からは笑いと拍手が起こった。物語の緩急をつけると同時に、ライブ感を楽しめる構成となっている。
湊の兄・樹役の佐藤、静真の弟・翔平役のHAYATO(XY)ら脇を固めるキャストも、物語に自然な広がりを与えている。家族や身近な存在として主役2人を支える役割を担い、恋愛だけにとどまらない人間関係を描き出していた。
物語の中盤、湊が過去のトラウマを思い出す場面は、本作の心理描写の中でも特に印象的なシーンとなっている。恋に踏み出すことを恐れる理由が明確に言語化されるのではなく、断片的な記憶と感覚として立ち上がる構成が、湊の心の傷の深さを際立たせていた。このシーン以降、2人の関係性は「惹かれ合う存在」から、「互いの弱さを知った上で向き合おうとする関係」へと質を変えていく。相手の痛みを完全に理解することはできなくても、理解しようとする姿勢を持ち続けること。その積み重ねが、2人の距離をゆっくりと縮めていく過程として丁寧に描かれていた。
音楽でも観客を魅了する本作は、物語のポイントとなる場面では、湊と静真をはじめとするキャラクターたちによるオリジナル楽曲が披露され、心情の変化を音楽でも表現している。テレビドラマとリンクする場面も多く、湊がゲームの始まりを宣言してカメラのシャッターを切ると、オープニングテーマである龍宮城の「SUGAR」が流れ、これから紡がれる物語への期待が一気に高まる。
舞台『セラピーゲーム』は、原作やドラマの世界観を尊重しながら、舞台ならではの表現で再構築された作品である。繊細な心理描写と、観客との距離の近さを生かした演出により、観る者を物語の中へと自然に引き込む公演となっていた。
なお、24日午後0時30分公演、午後5時公演、25日正午公演、午後4時30分公演の計4公演は、Huluにてライブ配信される。

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